安全性が高く、人と一緒に作業できる協調(協働)ロボットは、これからの産業用ロボットのカギになる技術だ。産業用ロボットの世界的なトップメーカーであるKUKAロボティクスの次世代協調型ロボット「LBR iiwa」を取り上げ、ロボット技術の最新動向を探る。最終回となる今回は、使いやすさ、導入しやすさについて触れる。
(5)軽量構造
LBR iiwaは、LBR(軽量ロボット)という名前の通り、ロボット単体の重量が2タイプともに30キロ以下に抑えられている。これは、ロボットを人の手で設置・移設することが困難ではない重さである。一方、仕様の近い当社の6軸小型ロボット「KR AGILUS」の可搬重量6キロのタイプは、重量が単体で50キロである。LBR iiwaはこれまでのロボットに比べて軽量構造となっていることがわかる。
そのため、ロボットをキャスターなどの移動装置に乗せ、自由に作業場所を変えることが可能となる。
写真は、ロボットを移動用の台車に乗せて作業場に移動する様子である。ロボットを移動すると、ロボットとワーク間の相対位置が変化し、一般にはティーチングのやり直しが必要となってしまう。しかし、LBR iiwaは繊細な衝突検知機能を持つため、ワークにツールを当て、「手探り」で相対位置を計測する運用も可能である。(4)で紹介した安全機能を用いた柵なしでの運用、そしてこの機動性により、既存の生産ラインへの組み込みも容易になる。
(6)JAVAによるロボットアプリケーション開発
LBR iiwaの特徴にJAVAを用いたプログラミングが挙げられる。この開発には、二つの大きな利点がある。
一つは汎用言語での開発が可能であり、新規導入が容易になるという点である。現在、LBR iiwaをはじめ多くの垂直多関節ロボットが存在する。垂直多関節ロボットは設置面積が小さく自由な動きが可能であり、汎用性が高いことが大きな特徴である。これを十分に生かすためには、ロボットの新規導入の容易さが重要である。しかし、これまでの一般的な産業用ロボットのプログラミング言語は、メーカー独自の言語が用いられていたため、新しくロボットを導入する際には新しいプログラム言語の習得が必要であった。
JAVAは現在、最も広く用いられている汎用プログラミング言語の一つである。言語習得のための講座、参考文献も多数存在し、新規導入がより容易になる。
2点目は、JAVAの膨大な標準ライブラリを利用できる点である。本来JAVAの持つ通信、データ処理など多くのルーチンを用いることで、ユーザーは記述するコード量を少なくすることができる。これは作業の効率化のみならず、テストの手間の減少やバグ混入の危険性を低下させるメリットもある。
(7)おわりに
LBR iiwaはユニークな外見をしているが、従来のロボットと異なる新しいコンセプトで作られたロボットである。その形状は人との協調作業を考慮してデザインされた結果であり、配線も内部を通すといった考慮がなされている。また、7つの軸と「触覚」の獲得により従来は困難であった繊細で複雑な作業を可能とする。
汎用言語によるロボットアプリケーションの開発は、新規導入の敷居を下げ、ロボットの活用範囲の拡大を促進すると考える。
実際に欧州ではロボットと人間が協調する、革新的な取り組みが進んでおり、世界的な流れになるのは確実だ。このように、ロボットが人間の良い「アシスタント」としてさまざまな分野で社会に貢献する時代は目の前に来ている。