IoT・スマートファクトリー SEMI IoT時代の製造ラインの技術標準化へ FlowMaster 「情物一致」搬送を実現

いま製造業では、IoT時代に対応した製造ラインの構築が課題となっているが、半導体製造における国際業界団体のSEMIでも同様の取り組みが進んでいる。PLCメーカーとユーザーが両者共同で、工程間で情報と物とを受け渡すためのインターフェイスを標準化し、物と情報とを同期して搬送する製造ラインの構築コンセプト「FlowMaster」を開発。フロー・ショップ型(順送り型)生産における製造工程の高度化を進めている。

■情報と物が同時に流れる製造ライン
製造ラインには、製造工程順に被加工物が流れていく「フロー・ショップ型(順送り型)」と、機能ごとに並んだ装置を被加工物が巡回する「ジョブ・ショップ型」がある。太陽光発電パネルや半導体の後工程など比較的シンプルな工程ではフロー・ショップ型が多く、半導体製造の前工程など複雑な工程はジョブ・ショップ型が採用されている。

これまでSEMI標準は、緻密な制御や高いクリーン度が必要な半導体の前工程、ジョブ・ショップ型向けに作られてきた。しかし一般的なフロー・ショップ型製造ラインでは、半導体前工程用のSEMI標準ではオーバースペックであるという声が多く、シンプルな製造工程を安価に早く組み上げるための標準が必要となっていた。そこで考案されたのが「FlowMaster」だ。

FlowMasterは、SEMI PVオートメーション委員会(現オートメーション・テクノロジー委員会)が開発したSEMIスタンダード「PV35HC」がベースとなっている。

あらゆる製造ラインでは被加工物本体と、装置管理情報と被加工物の固有情報が一致した状態で工程を流れる必要があり、これを「情物一致」と言う。IoT、インダストリー4.0で言う「CPS(サイバーフィジカルシステム)」や「デジタルツイン(デジタルの双子)」とほぼ同義に使われる。

PV35HCは、この情物一致をフロー・ショップ型の製造ラインで実現するインターフェイス。PV35HCでは隣接する装置間で受け渡す装置管理情報「General Data」と、その通信路「Line Information」、被加工物の固有情報「Material Data」と、その通信路「Track Information」を規定している。

■コンセプトは「安い・早い・旨い」
情物一致の流れを作るには、装置間の水平のインターフェイス「HC(Horizontal Communication)」と、ホスト・システムと装置との間の垂直のインターフェイス「VC(Vertical Communication)」、さらに「どんな情報を受け渡すか」といった標準が必要となる。

しかし製造ラインには、オープンネットワークなどの通信プロトコルの標準は各種存在しても、製造ラインとしての情報構成と手続きの標準がなかった。

また、フロー・ショップ型製造ラインではホスト・システムがなく、被加工物の情報が各装置に分散していることも少なくない。システムを整備するとMES(製造実行システム)が必要になって投資コストが大きくなるという問題も存在していた。

それに対しFlowMasterは、「安い・早い・旨い」をコンセプトに「すぐに接続でき、トレーサビリティに優れ、装置が自律的に動き、過度にMESに依存しない」製造ライン構築でそれらを解決しようとしている。

具体的には、受け渡す情報とその通信路はPV35HCをベースにし、それを機器に実装するためにPLCメーカーと共同でファンクション・ブロックを開発中。PLCにFlowMasterに則ったファンクション・ブロックを組み込んでおくことでプラットフォーム化し、装置同士の相互接続性や情報共有、個別開発の手間やコストなどを解決する。

開発は3ステップで行う予定で、はじめに装置間で情物一致させるHC用の標準仕様「FlowMaster HC」とそのファンクション・ブロックを提供し、次いでホスト・システムとの情報をつなぐ「FlowMaster VC」、最後に装置制御用の標準仕様「FlowMaster EM」と続く。

■主要PLCが参加 他業界への展開も
その中心となるのが、普及母体となる「FlowMaster Forum」だ。同フォーラムのメンバーは現在、三菱電機とシーメンス、キーエンス、横河電機、日清紡メカトロニクスなど、PLCメーカーとそのユーザーが中心となって活動している。現在、半導体後工程への適用検討が進められている。さらに、自動車や電子機器、医薬化粧品、飲食料品など、他の産業におけるフロー・ショップ型の製造ラインへの適用も検討されている。

「情物一致は、被加工物が自らのデータを抱えて装置間を走り抜けるイメージで、オブジェクト指向の考え方に基づく。自らのデータとは、どの工場でも使われている『現品票』がベースとなる。すでに情物一致で情報と物とを受け渡す仕組みの標準化は完成し、PLCのファンクション・ブロックもできあがっている。あとはテスト・ケースを重ね、種々の製造ラインに展開していきたい。

将来的には、装置同士を並べたら製造ラインが完成し、その情報をホスト・システムが認識して指示を与えてすぐに生産が開始できるような自律的な製造ラインを実現したい」。(SEMI FlowMaster Forum連絡先:SEMIジャパン事務局 コリンズ純子氏)

※「FlowMaster HC」はSEMICON Japan 2015に展示予定

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