2016年はIoTを具体的に導入、運用する年になるのは間違いない。スタートするためには現状を知ることが重要だ。実際、IoTを検討する企業はどう考えているのかについてまとめた。
■IoTの国内市場規模は?
今、IoTの国内市場規模はどの程度で、将来的にどこまで伸びるのか?
富士キメラ総研が調べたビッグデータ/IoTソリューション市場の調査によると、14年度は2100億円で、19年度はその3倍の6400億円になると予測している。
14年度時点の投資は、IoTの基盤となるデータ収集や蓄積のための機器とそのインテグレーションが大半を占め、19年度には分析のレベルアップとERPとの連携需要が高まり、19年度には2300億円まで伸びるとしている。
MM総研が、国内企業4299社を対象にして行ったアンケート調査によると、国内IoT市場規模は、14年度に1733億円で、15年度には2930億円と前年比69.1%増と急激に拡大。
その後も順調に成長を続け、19年度には7155億円に達すると予想。14年から19年までの5年間の年平均成長率は32.8%を見込んでいる。
■導入機運が高伸びが期待される製造業
IoTの導入の進み具合と、これから伸びる業界はどこか?
富士キメラ総研によると、IoT構築基盤としてはクラウドの活用が主流であり、現在の需要は、小売業における売り上げ分析や予測、ソーシャルゲームなどでのリコメンデータションが中心だが、今後は製造業のIoT利用が増加すると見ている。
特に製造業では、データ収集から蓄積、加工などの処理から、データ活用までを含めたIoTを実現するためのプラットフォームサービスが広がっているとしている。
現段階では、新規での実証実験レベルの案件が多く、サービスの利用料金も月額数千円程度にとどまっている。しかし、今後IoTの活用が本格化して運用レベルになると、接続デバイスやサイトが広がって、1案件あたりの単価が上昇して急成長すると予測している。
MM総研の調査では、IoTをすでに導入していると答えた企業は469社。回答企業全体の10%超がIoTを利用している。
その内訳を見ると、最も多かったのが「製造業」。全体の3割を占めている。次いで「サービス業」の13.4%、「情報通信業」12.2%と続いた。
同社は、製造業が最も多い理由として「生産効率の向上や製品の品質向上など、製造現場で取り組んできた改善活動がIoTを受け入れる下地になっていることが挙げられる」と分析している。
■導入における最大の懸念はセキュリティ
IoTを導入する上での課題や、普及にともなって発生する懸念事項は?
MM総研は、IoT導入を検討している企業が感じている課題について、セキュリティを挙げる。「情報漏えいやサイバー攻撃の不安」を感じる企業が33.1%。次いで「システム構築・運用コストの削減」(26.6%)、「システム構築・運用業務の効率化」(25.4%)と続いた。
IoTを導入する企業は、生産設備や機械、施設、製品をオープンなネットワークに接続する必要があり、それによる重要なデータの流出や外部からのサイバー攻撃の可能性を警戒している。同社では、ネットワークセキュリティの強化やシステム全体のセキュリティ対策を検討している企業が多かったとまとめている。
富士キメラ総研では、IoTに関する課題として、ネットワーク負荷や分析のリアルタイム性などを挙げる。データの収集と活用について、取り得る限りの全データの取得を望むユーザーに対し、ネットワーク負荷や通信コストをどう解決するのか。また分析のリアルタイム性を実現するためのセンサやゲートウェイでのデータ処理などエッジコンピューティングの活用も検討課題として挙げる。
またビジネス面での課題として、IoTプラットフォーム、サービスのベンダー増加にともなって価格競争の恐れがあると警告。プラットフォーム単体の機能では差別化が難しくなり、アプリケーションも含めたトータルソリューションとして付加価値を高め差別化を図る必要がありそうだ。