2015年の世界経済を振りかえってみますと、欧州のユーロ圏では緩やかな回復がみられ、米国では堅調に景気回復が進むなか金利の引き上げに踏み切りましたが、アジア地域では特に、リーマンショック後に世界経済をけん引してきた中国の緩やかな景気減速をはじめ、新興諸国での景気回復の弱さが見られました。
16年の世界経済については、引き続いての回復基調を期待していますが、米国の金利引き上げに伴う新興諸国への影響や中国経済の減速、そしてエネルギー価格の下落影響などによる景気の下振れリスクや中東・難民問題などの地政学的リスクに留意する必要があります。
翻って、わが国の経済は、中国およびアジア新興国での景気減速から輸出の弱含みによる生産および設備投資の回復力に弱さが見られた半面、個人消費の底堅さ、企業収益や雇用情勢に改善の動きがあったことで、全般的には緩やかな回復基調が見られました。
このような環境の下での15年のロボット業界は、従来の税制効果に加え、政府が昨年2月に発表した「ロボット新戦略」での20年に向けた「ロボット革命」の実現に向けた産業目標とその政策効果などで、ユーザー側のロボット導入機運が大いに高まりました。特に国内出荷額は2桁台の伸びとなったほか、輸出も堅調な伸びとなったことで、その生産額は対前年比6%増の6300億円が見込まれるほか、生産台数も過去最高となることが見込まれます。
そして、16年の今年は、引き続き国内での需要増に加え、米国でのさらなる景気拡大と製造業回帰による堅調な伸び、中国での減速経済の中にあっても高い自動化投資意欲や、欧州でのインダストリー4.0などIoTを通じた産業用ロボットへの関心の高まりなどから、今年も海外需要の拡大が期待されており、ロボット生産額の見通しは6700億円となっています。
このような中、当業界としては中長期的視点に立った業界の活性化を図る必要がありますが、以下の3点を重点項目として取り組む所存です。
第一は「市場拡大に向けた取り組み」です。
先の「ロボット新戦略」においては、20年に向けたロボット革命の実現目標として「世界一のロボット利活用社会の実現」「世界のロボットイノベーションの拠点」、そして「IoT時代のロボットで世界をリード」の三つを打ち出しました。そして、それを実現するにあたっての組織的プラットフォームとして「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立され、昨年からその具体的活動がスタートしています。
当工業会では、この中の「世界一のロボット利活用社会の実現」に関わる「ロボット利活用推進WG」の事務局を担当しています。そのミッションは、ロボット利活用を加速させるために有効な分野の横断的かつ具体的仕組みの構築、さらには各分野でロボット活用を期待するユーザー側の要望をサプライヤーにつなぐ仕組みの具体化・実現などとなっており、イニシアティブ協議会との連携のもと、ロボット市場の拡大に向けその役割を積極的に務めてまいります。
第二は「産学等の連携等を通じた研究開発の推進」です。
競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後の潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大が不可欠となっています。特に、欧米先進国での技術革新に加え、新興国でのロボット技術のキャッチアップは目覚ましく、わが国としても技術革新に向けた研究開発の推進が急務となっています。
業界としては、ユーザーをはじめ、部品・部材メーカーやシステムインテグレータ、そして学界などとの幅広い研究開発の連携・強化を通じてイノベーションの加速化を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会および関連業界との連携に努めて参ります。
第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。
国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいますが、わが国も官民挙げての取り組みが重要と思われます。特に、今年の2月17~24日にかけ名古屋市でISO/TC299(ロボティクス)WG1(ロボット用語)、WG2(サービスロボットの安全性)、WG4(サービスロボットの性能)およびWG6(サービスロボットモジュラリティ)の会議が開催されることとなっており、国際標準化活動に対しては引き続き積極的に取り組むこととしております。加えて国際ロボット連盟の活動とも併せて、国際交流を積極的に推進していく所存です。
また、本年6月に「実装プロセステクノロジー展」の開催をはじめ、ユーザーの設備投資意欲を大いに喚起する諸活動に加え、国際交流、市場調査、技術振興などの各事業を意欲的に展開する所存です。
引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。