FA(産業)用PC PLC インダストリー4.0をけん引

生産設備における頭脳ともいえるPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)/産業用PC(インダストリアルPC)の重要性が、第4次産業革命や工場のIoT化の進展に伴い高まっている。

■拡大続ける市場規模
富士経済が行った市場調査によると、PLCの国内市場および日系メーカーによる海外輸出の市場規模は順調に拡大を続ける見込みだ。出荷金額では2015年度で1888億円(前年度比108.4%)、18年度予測で2149億円に達すると見込まれている。

国内市場は液晶ディスプレイ製造装置向けや、自動車向け電子部品の設備投資が好調である。また、輸出はカナダ、アメリカ、メキシコなどで自動車関連向けが堅調。中国や東南アジアは製造業全体に生産過剰感があり、成長率の鈍化が目立つが、人件費の高騰や、品質向上のニーズから生産ラインの自動化に対する需要は高い水準を維持している。

PLC自体の性能も年々高まり、処理速度やメモリ容量の向上が著しい。また、専用コントローラでの制御や高価な別売りユニットが必要とされていた「モーションコントロール」や「ネットワーク通信」についてもCPUに機能が内蔵されているタイプなどを各社が開発し、アプリケーションの幅が広がっている。ラダープログラムや高級言語の知識がなくても簡単にソフト設計ができるツールを提供するメーカーもある。プログラム転送用ケーブルはLANケーブルやUSBなど汎用ケーブルが当たり前になり、プログラミング用ソフトの無償バージョンアップを実施するメーカーも増え、通常産業用機器では1年間のメーカー保証期間を3年とするメーカーが増えるなど、エンジニアが安心して使える環境が整いつつある。市場の裾野は広がるばかりだ。

■安定稼働とデータ処理両立
産業用PCに関しては、明確な調査はないものの、当社の調査によると市場規模は順調に拡大していると予測され、特に国内においては環境の変化が感じられる。

従来は製造設備のコントローラとしてPCは安定性などで懐疑的な見方をされ、PLCのみで生産設備の制御設計がなされる場合が多かったが、近年は三つの要因から産業用PCを含めた制御設計が増えていると見られる。

ひとつは製造設備の高度化に伴い、産業用PCが得意とする制御が増えてきたことが挙げられる。従来は人の手の代わりを目的とした搬送、組み立てなどの装置では数値や文字、画像情報を扱う必要性があまりなく、I/Oレベルの制御で実績があり、ローコストなPLCで十分なケースがほとんどであった。しかし、トレーサビリティ強化、画像処理などを用いた検査ニーズの増加など「データ」を扱う必要性が急激に増加。産業用PCで制御することで、設備の安定稼働とデータ処理を両立させるケースが増えている。

もうひとつは産業用PCの信頼性に対する認知が広がってきたことだ。リアルタイムOSとWindows・Linuxなどを共存させることが当たり前になり、従来OSのフリーズを心配して産業用PCを機械制御に採用できなかったケースでも安心して採用ができるようになった。万が一OSが動作停止に陥ってしまった場合も、機械制御を別途リアルタイムOSで実行していれば生産設備のダウンタイムを最小限にすることができる。そのためマシン制御をPLCレスで行う装置も増えてきた。Windowsと共存して使うことで、表計算ソフトなどの汎用ソフトを活用できることもメリットだ。CPUやメモリ自体の信頼性も高まり、オフィスで使用している汎用PCでさえダウンするケースが減り、イメージ的にPCに対する不安感が少なくなってきたこともあると思われる。

さらに、生産現場の情報化が進み、製造設備レベルやラインレベルで、ある程度生産情報や品質管理情報を扱う必要が発生し、汎用PCの代わりに信頼性が高い産業用PCが採用されるケースもあるという。もちろんPLCと産業用PCを併用するケースも多い。

PCとしての基本性能はCPUメーカー、メモリメーカーなどに依存してしまうため、各社はサービス体制、搭載ソフトなどで差別化を図っている。特に民生向けPCと異なり、長期安定稼働が要求されるため、メーカーによっては最大10年も製品供給を保障し、12年もの修理期間を設定したりしている。デスクトップタイプから表示器一体型、DINレール取り付けタイプなど多彩なラインアップを各社展開している。

■プログラミング言語標準化 オープンネットワーク普及 垣根越え互いの機能保有も
従来、プログラミング言語においては各PLCメーカーがプログラミング言語とローダーと呼ばれるエンジニアリングツール(ソフト)を独自開発し提供。場合によっては同一メーカーでもシリーズが異なると命令語やプログラミングルールが異なっていた。さらにはPLCの機種により、PCとの接続ケーブルが異なる場合さえあった。

これにより、生産現場では保有しているPLCメーカーのソフトやケーブル、保全担当エンジニアが扱える言語などの問題でメンテナンスができるPLCのシリーズが制限され、自社ではささいなことでもメンテナンスができない装置が多数あるというケースも珍しくない。

このような課題を解決すべく、近年はプログラミング言語の標準化、ソフトウエアの再利用、開発期間の短縮などに向けて、国際標準言語規格「IEC61131-3」を活用する動きが活発化している。現場では通称「シックスイレブンサーティーワン」と呼ばれ注目を集め、産業用オートメーション分野の合理化につながるものとして、欧州を中心に普及が進んでいる。日本でもJIS規格化(JISB3501-3503)されている。

IEC61131-3は、さまざまな業種・用途、いろいろなスキルを持った技術者に対応できるように5言語を標準化している。IL、ST、FBD、LD、SFCの5つを一つのプログラム内に混在して使用できるのが大きな特徴。ベンダーに依存しないソフトウエアの開発ができることで、若手技術者が慣れ親しんだ言語でプログラミングができる。欧米メーカーだけではなく、国内メーカーでも採用が進んでいる。

PLCも産業用PCもセンサやアクチュエータとのネットワークによる接続が強化されている。特にEtherCATをはじめとする高速な産業オープンネットワークは普及を加速させており、設備の拡張性を高めている。設備の末端情報をコントローラ経由で上位にアップし、配線工数の削減や設備の見える化に貢献している。

製造業のグローバル化に伴い、日系企業でも設備仕様を海外工場と統一する動きがでている。そのため、海外工場での調達のしやすさ、サポートはもちろん、現地エンジニアがメンテナンスできる製品かどうかがコントローラ選定のポイントになるケースも増えている。そのため、欧米、アジアのメーカーがグローバルのサポート力を武器に日本市場に対しアプローチを強化している。

前述のプログラム標準化、産業オープンネットワークの普及により、PLCと産業用PCとの垣根が低くなり、DINレール取り付けで一見PLCに見える産業用PCや、C言語でプログラミングができるPLCなども増え、PLCと産業用PCとの垣根は年々低くなりつつある。

従来は外部ネットワークと遮断されていたPLC/産業用PCも、製造現場の情報化が進展し、外部と接続されるケースが増えてきた。無線LANの普及や、ネットワークに接続されるPLCも増え、悪意があれば簡単にアクセスができる。PLCメーカーからは通信用のコマンドなども公開されており、無防備な状態ではデータの書き換えなども容易だ。パスワード設定などの機能も各社強化している。また、ユーザー側も各自が高い意識を持ち、ハード的、ソフト的な対策を行う重要性が高まっている。

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