新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」の追加公募を実施し、11件の助成先を決定した。多品種少量生産や変種変量生産に対応したロボットシステムや、リアルタイムに各ロボットの挙動を制御して全体最適化する生産システム技術など、現場で即戦力になるような技術が選ばれた。
■「即戦力」で全体最適化
同プロジェクトは、ものづくり分野とサービス分野を対象とし、ロボット活用に対するユーザーニーズと市場化・製品化の出口を明確に具体化している新規のロボット技術の開発に対し、助成を行うもの。昨年8月に第1回の助成先が発表されており、今回は追加公募となる。
阪上製作所(東京都墨田区)が開発する「ゴムパッキン製造ロボットセル」は、多品種少量生産のゴムパッキンの製造工程のうち、プレスから梱包までをロボットセル化して全自動で行い、生産能力の3倍化と在庫レスを目指す。金型からのゴムシートを剥離する時の吸着技術と、サイズや断面形状の異なるゴムパッキンにすべて対応できるハンドの開発をポイントに挙げている。
OMC(名古屋市中区)の「コンテナ用クランプバンド脱着システム」は、コンテナ容器の蓋とバルブを固定するクランプバンドの脱着をロボット化することで、従来2人必要だった作業員を省人化できるという。
コンテナの個体差を識別する視覚センサとクランプバンドの把持に特化したハンドの開発を進める。
別川製作所(石川県白山市)の「板金レーザー加工機バラシ・仕分け工程の自動化」は、完全受注型の変種変量生産に対応するロボットによる板金バラシ・仕分け工程の自動化を目指す。金属光沢や切削油、外光など悪条件下でも形状認識ができる技術と、板金バラシ・仕分けの自動ティーチングシステムの開発で、作業効率36%の改善が期待できるという。
ホワイトインパクト(名古屋市千種区)の「3D造形の後工程に対応した粉末除去ロボット」は、3Dプリンタによる加工終了直後の200℃以上の高温環境下、粉塵が舞うなかで画像認識し、粉じん爆発を起こさない吸引作業を行うロボットの開発を進め、50%以上の造形後工程時間の短縮を目指す。
三次元メディア(滋賀県草津市)による「産業ロボット用3次元ビジョンセンサの高度化開発」は、カメラとプロジェクタ一体型の3次元ビジョンセンサを開発して初期設定や設置時間の短縮、小型軽量化を図るほか、高性能画像処理ボードをヘッドに内蔵することで3次元ビジョンの高速化を進める。バラ積みピッキングへのロボット活用を広げ、人間の関与率を100%から2%にし、生産性98%向上を目指す。
レクサー・リサーチ(鳥取市)の「超並列シミュレーションによる動的全体最適技術」は、生産シミュレーション技術を中核とし、各ロボットの挙動を最適制御することで全体最適ができる統合最適化生産システム技術を開発する。生産計画をリアルタイムに最適化して生産することで、生産システムの稼働率30%向上を目指していく。
またサービス分野でも、エンジンを動力として長時間飛行できる測量用のドローンのほか、介護福祉施設での衣類のクリーニング作業の負担軽減を目指す全自動折り畳み装置、自動倉庫とピッキングロボットの組み合わせシステム、物流センターでの容器変換と箱詰めのロボット化システム、プラントの小型配管内の点検ロボットの開発などに助成が決定した。