PV(太陽光発電)設備の普及が進む中で、稼働中の設備の自然災害による重大事故発生や、設置基準に適合しないことによる感電事故や火災などのトラブルが心配されている。
経済産業省の調べでは、500kW以上の事業用PV設備の感電死傷などの重大事故は、2004年~13年までは0件、12年8件、13年4件と少ない。他方、台風など自然災害によるパネル飛散や架台倒壊、設備水没などの事故が昨今発生している。昨年9月の鬼怒川決壊では水没したPVパネルによる感電の危険性も想定され、経産省では注意喚起している。
PV設備の保守は、出力50kW以上の設備は定められた電気技術主任者が保守監督を行うことになっているものの、電気技術主任者は法定点検に基づき不具合を発見した場合、発電業者に報告する点検が主業務で、出力低下や故障の原因調査、それに基づく改修工事などは、それぞれの専門業者が行っている。
PV設備はパネルからパワコンまで直流電流が流れているため、保守点検は一層注意が必要となっているが、メンテナンス体制や法整備はまだ緒についた段階で、5年、10年先を見据えた品質確保や安定供給のためにも、整備が求められているのが実情。JSIAでは、こうした事態に対応すべく支援策を打ち出し、13年4月に「産業ソーラメンテナンス研究委員会(15年4月から産業用ソーラメンテナンス委員会に名称変更)=寺田哲也委員長」を立ち上げ、PV設備の保守ビジネスを開始している。受配電システムの設計・製造など電気のプロ集団として、約2年間活動。この間、「産業用太陽光発電設備の保守点検ガイドライン」や「産業用太陽光発電システムの概要」の作成、教育訓練の斡旋、PVメンテナンス点検と不具合事例の検討などを行ってきた。
この経験から、今後は今まで外部の研修機関に依存してきた教育訓練をJSIA内部で実施できるように現在カリキュラムを検討している。
また、メンテナンスを受注する場合の留意事項や、パネル・接続箱・集電箱など、法定点検に含まれていない機器について、作業手順に基づき写真を多数掲載した分かりやすい「メンテナンス作業マニュアル」の作成を進めている。
PV設備は短期間に拡大したため、施工業者によっては電気の知識が十分備わっていないずさん設備も見受けられ、さらに人里離れた野立てや折板屋根に設置されたものなど、作業性の良くない場所ではメンテナンス費用そのものよりも、付帯する費用が無視できない場合もあることから、顧客情報管理ツールなどを作成し、メンテナンス受注時に確認すべき資料として作成を検討していく。
JSIAでは、こうしたツールを活用しながら、手始めに自社が納入した公共施設など比較的小規模のPV設備のメンテナンスに取り組んで実績を積み、数年後に本格化することが予想されるメンテナンス需要を大きなビジネスチャンスととらえ活動を強めていく。