端子台やコネクタ・ソケット、ケーブルアクセサリなどの配線接続機器の市場は、旺盛な需要が産業全般で続いていることから上昇基調が継続している。ⅠoTの言葉で代表される「つなげる・つながる」部分を支える部品として関心が高まっていることも追い風になっている。さらに東京オリンピックをはじめ、国内ではインフラ関連の投資が継続していることも大きい。市場のグローバル化が進む中で、端子台では欧州メーカーの動きが活発になっており、市場の活性化をけん引している。同時に円安基調の定着で国内生産に注力する動きも目立っている。
国内の配線接続機器の市場は4600億円前後とみられる。コネクタが約4000億円、端子台・ソケットが500億円、ケーブルアクセサリ類が100億円ぐらいになっている。コネクタを中心に海外生産が増加していることから、国内生産はさほど増加していないが、需要として堅調な拡大を維持している。しかし、円安の定着もあり、以前に比べると海外生産シフトの件数は鈍化しており、立地先も中国を外したASEANなどの新興国への進出が目立つ。端子台については、まだ国内生産が多く、むしろ国内生産を強化しようとする動きが見られる。また、欧州メーカーを中心に日本市場での営業強化の動きも活発で、新製品の投入も目立つ。
端子台の国内市場は、製造業の設備投資拡大で、工作機械やロボット、半導体製造装置などが堅調で、加えてビルや工場などの受配電機器向けの需要も拡大している。
2015年の工作機械の生産は過去3番目と依然好調で、今後も既存機械のリニューアルが継続するものと期待されている。導入に向けた設備投資減税も再び予算化されたことで、市場への刺激になることが期待されている。
半導体・液晶製造装置も、スマートフォンやタブレットPCなどをはじめ、IoT時代に対応したセンサーや通信関連需要が追い風になり、拡大基調となっており、今年も5.5%増と連続した伸びが見込まれている。
ロボットは、海外では人件費の高騰や高精度なものづくり需要に対応して市場が大きく拡大。国内でも人手不足や安定した品質の確保、さらには介護やサービス用など、製造業、非製造業の両面から採用が増えている。ロボットと人の協働を進める法制面の緩和が進んだことも、今後の導入への追い風として期待されている。
新エネルギー関連も端子台の期待市場といえる。一時ほどの勢いはなくなりつつあるもののPV(太陽光発電)システムや風力発電などの新エネルギー向けは、パワーコンディショナー、接続箱、集電箱といった周辺装置などで相当数の端子台が使用されている。
こうした再生可能エネルギーは、商用電気として使用するには、DC(直流)とAC(交流)を変換することが必要で、DC600Vなどといった高圧への対応が求められる。DCに対応した端子台は、高圧への耐性が必要となってくるが、DC1000V、DC1500Vに対応する端子台も開発されており、新たな需要を生み出している。
同時に、停止していた原子力発電の再稼働が始まりつつある。原発再稼働による端子台などへの波及効果は大きく、今後、電力関連の投資拡大が端子台市場の底上げにつながるものと見られる。
最近の端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDCの高耐圧化などがトレンドとして挙げられる。IoT化の進む中で、機器や設備などをつなぐ機会は飛躍的に増えてくる。インダストリー4.0やインダストリアル・インターネット・コンソーシアムなどに代表される新しいものづくりの実現において、配線接続機器の果たす役割も飛躍的に増えてくる。省スペース・省工数・確実な接続信頼性といったニーズも必然的に高くなり、製品開発力が求められてくる。
端子台の接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)、圧接式などがある。
日本はねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。しかし、ねじ式は配線作業の手間がスプリング式に比べ多くかかるのが難点となっている。ねじの緩みを直す増し締め作業も必要になることが多い。このため、ねじとばねを組み合わせて、仮止め作業が容易にできるようにしたり、ねじの脱落を防ぐ構造にするなど工夫が加えられている。
スプリング式は配線作業の容易さと、作業スピードの速さでねじ式に比べ格段に優れている。日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ねじ式とスプリング式の作業性などについて実機によって検証を行ったが、スプリング式はねじ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果も出ている。
昨年12月開催のシステムコントロールフェアで、1台で丸/Y形端子とスプリング端子を共用できる「ハイブリッド端子台」が展示され、大きな注目を集めた。端子台の片方が丸/Y形端子台、もう片方がスプリング式となっており、配電盤に設置する内線はスプリング式、外線は現場の電気工事によく使用して慣れている丸/Y形端子台として使えるため、それぞれにとって都合がよいといえる。
端子台の材質も、日本の端子台同様になじみのあるポリカーボネートを採用して、耐衝撃性、耐久性、安定性を確保している。