IoT、インダストリー4.0、スマートファクトリーを支えるフィールドネットワークや産業用Ethernetなど、いわゆる“産業用ネットワーク”。実際、現状はどのネットワークが最も使われているのか?
世界市場では、産業用Ethernetが急成長しているが、まだ従来のフィールドバスが半分以上を占めている。新たな動きとしてIoTによりワイヤレス技術も導入されつつあることが分かった。
■初登場のワイヤレス フィールドバス58%VS産業用Ethernet38%VSワイヤレス4%
この調査を行ったのは、スウェーデンの独立系サプライヤーで、産業用通信やIoT向け製品・サービスを展開するHMSインダストリアルネットワークス。FA分野で2015年に新規設置されたノード数をもとに、複数の市場調査とHMS独自の販売統計に基づき、HMSが16年の状況を推定し、「産業用ネットワーク市場シェア動向2016」を作成した。
全体の流れとして、産業用Ethernetが急速に成長。昨年よりも4ポイント上昇し、市場の38%を占めている。そのなかでもEtherNet/IPが首位で、Profinetが続く。全体ではフィールドバスが58%と大半を占め、新たにワイヤレスが4%まで拡大している。
■年間7%で成長中のフィールドバス
現在もネットワークの主流はフィールドバス。市場の58%を占める。簡便さや長く使われてきた信頼感により、現在も年間7%で成長している。
フィールドバスのなかで最も使われているのがPROFIBUS(産業用Ethernetを含む全世界市場の17%)で、Modbus(7%)、CC-Link(6%)と続く。
■産業用Ethernetの成長は以前よりも急速で著しい
産業用Ethernetは、年間20%という高い成長率で急拡大。グローバル市場のシェアも昨年の34%から38%に上昇すると見られる。
その内訳を見ると、EtherNet/IPが9%を占めてトップ。次いで8%のPROFINET。EtherCAT、Modbus-TCP、Ethernet
POWERLINKが続いている。
同社マーケティングダイレクターのアンダース・ハンソン氏は「新規設置ノードについては、産業用Ethernetへの移行が加速している。しかし、産業オートメーション分野は保守的な市場のため、産業用Ethernetがフィールドバスを凌ぐには、もう少し時間がかかるだろう」と予測している。
■IoTで急成長のワイヤレス
ワイヤレスは、産業用ネットワーク市場の4%を占め、今回初めてチャートに入った。
最も普及しているのは無線LANで、Bluetoothが続く。
ハンソン氏は「IoTが、ワイヤレス技術の広がりの大きな要因となっている。ワイヤレスによってオートメーションの設計構築に新たな可能性が拓かれ、タブレット端末やスマートフォンなどを含め、機械の接続性や制御性を実現するうえで、ますますワイヤレスが検討されるようになっている」としている。
■地域別の分析
ヨーロッパや中東は、PROFIBUSが優勢だが、PROFINETが急速な成長を見せる。EtherCAT、Modbus-TCP、POWERLINKが続く。
アメリカ市場では、CIPネットワークが支配的で、市場シェアではEtherNet/IPがDeviceNetを追い越しつつある。
アジアでは、市場をリードしているという際立ったネットワークは見られないが、PROFIBUSやPROFINET、EtherNet/IP、Modbus、CC-Linkが広く使われている。また、EtherCATが重要なネットワークとしてのポジションを固めようとし、CC-Link IE Fieldの兆しも見られている。