■最近話題のインダストリー4.0(Industrie4.0)って何?
近頃、ネットやメディアでインダストリー4.0という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が増えています。Industrieはドイツ語で、英語のIndustryに当たります。したがって、日本語にすると第4次産業革命という言葉になりそうです。第1次産業革命は蒸気によって、第2次は電力によって、第3次はPLCなどを活用した生産の自動化(ファクトリーオートメーション)によって実現されました。では、第4次はどんなものなのでしょうか。
Industrie4.0自体は、ドイツ政府が提唱する製造業革新プログラムで、サイバーフィジカルシステム(CPS)というものものしい副題も付いています。この言葉から読み取るに、製造業という極めて物理的な現場に、仮想空間のパワーを持ち込む、あるいは組み合わせるということに見えます。
つまり従来の仮想空間主体の情報化だけでなく、現実空間に対する情報化を実現するリアルの情報化と言えます。そして、IoT、M2Mなども、このIndustrie4.0の表れであり、従来のファクトリー・オートメーションを超えるものであることは間違いなさそうです。
とは言っても、Industrie4.0で言われていることは、概念としては以前から存在していました。それを実現する情報処理能力や通信インフラなどが追い付いていなかったからできなかったのです。しかし、この数年、大量データ(ビッグデータ)の高速処理技術や高速通信技術が大幅に進歩したので、Industrie4.0で提唱するようなことが現実に実行可能になってきました。すると、今度はその技術力を活用して新しいパラダイムを具現化していくことが、競争力の源泉となってきます。今まさに、この強化された技術力をふんだんに用いて新しい事業や商品開発を行うべき時なのです。では、どのようなことが具体化されているのでしょうか。
ここで、いくつか先進的な企業の取り組みに目を向けてみましょう。
■NikeID(ナイキ社)
スポーツ用品メーカーとしてシューズを中心に高いブランド力を持つナイキ社は、スポーツシューズの受注生産をインターネットで開始しました。少量生産の高級革靴などではテーラーメードは従来ありましたが、スポーツシューズという汎用的かつ大量に売れるものにおいても可能になるという事例です。ユーザーサイドからは、色や形状、大きさ、デザインなどを指定するだけのようにしか見えませんが、工場サイドで細かな指定に対応できるインフラを持ち、ユーザー側の仕組みとの密接な関係を持った上での対応が必要になります。
しかもインターネットで受注をするので、大量な件数の処理が見込まれます。ビッグデータ処理、現場対応として必要になるモバイル機器、そしてこれらを構成するトータルシステムがこの仕組みを支えています。
■ DriveNow(BMW社、Sixt社)
自動車を所有せずに借りる、いわゆる「所有から利用へ」という流れは、現在のトレンドと言えます。はしりとしては、レンタカー、カーシェアリング、そして相乗りなどでしょう。しかし、相乗りの場合は、知らない人同士だと気まずかったりして敬遠されることがありますが、知り合いが乗車を希望しているというような情報を共有できれば、相乗りを心地よく利用することが可能になります。このように、機械的な割り当てではなく、利用者の満足度を上げるような仕組みを付加することが情報処理能力の活用により可能になっています。
■Coca Cola Freestyle(コカコーラ社)
コカコーラ社では、自社のソフトドリンクに香りや甘さ、炭酸の有無などを組み合わせて125種類以上のソフトドリンクを提供できるベンディングマシンを2009年から提供しています。スマートフォンなどで自分だけの組み合わせを登録しておくことも可能で、消費者の細かいニーズに応えています。消費者のリテンションにつながるということに加え、消費者一人ひとりに合わせたものなので値引きをしなくても売れるということがメリットとのことです。そしてこのベンディングマシンでは、個別販売履歴管理(登録ユーザーの場合にはその情報も含む)、ユーザーへの商品お薦め、RFIDタグによる残量管理とアラート発信などIoTやアナリティクスなどが活用されています。
(次号に続く)
(SAPジャパン山﨑秀一)
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