不連続戦線に異状なし 黒川想介 (41)

■現場に合った営業の型 将能にして君御せざる者は勝つ
業務用や産業用向けに電機部品や機構部品、機器商品を販売している営業マンは、荒っぽい言い方をすれば、90%以上の売り上げを顧客が勝手に発注してくる製品や、リピート品でまかなっている。顧客が勝手に発注してくるまでには販売会社の長い歴史が関わっているのであって、一朝一夕にできたわけではない。新商品が世に出るたびにカタログやサンプルを見せてアピールし続けてきた効果が、現在の売り上げの90%以上を占めているのである。

もちろん納期やクレーム処理やもろもろのサービスを長い間かけてやってきたこともある。しかし勝手に発注してくる商品の種類は、過去からの担当者がコツコツとアピールしてきたものやそのものの周辺の部類である。

部品や機器を販売する業界は大きく成長してきた。業界の草創期は顧客作りから始まった。草創期では、人が顧客を作った。成長期には次々と世に出る商品が顧客を作った。昨今の成熟期では、できあがった顧客とどのように向き合うかで売り上げの拡大を図る活動が主流である。もちろんこれでは売り上げの伸びがないとの思いから、客先開拓の旗を掲げて活動する会社もないわけではない。しかし、よほどの意志を持ってやらなければ現状の売り上げ客に精を出した方が良くなってしまう。

成熟期の客先開拓は、成長期と違って結構難しい。草創期には部品や機器商品を必要とする客は少なかった。だから人が顧客になりそうな客を探して歩いた。成長期には部品や機器商品を必要とする客が多くなったために、部品や機器商品自体が客を呼びこんでくれた。つまり部品や機器商品の効能をアピールすることによって見込み客が顧客になっていった。

昨今ではどこも部品や機器商品を使いなれているから、しっかりした堅いルートが存在する。したがって商品の効能アピールが利かないし、狙っている見込み客はすでにがっちり固められている。

ということは、客を増やそうとしても部品や機器商品を必要としなかった草創期と同じ状態にあるのだ。だから営業個人の魅力で客を作った草創期のような時代感性が必要なのである。

人の魅力が見込み客に伝わるまでには相当の時間がかかる。このためある期間、見込み客に会い続けられる営業の型が要る。成熟時代の見込み客に接する営業の型は商品以外のものごとに頼るのが順当である。ここでは営業マンの個人の個性に任せられることが一番なのだが、現状ではそれほど器用な営業マンは少ない。そこで各部門で型の開発をする必要がある。エリアを任されている部門、業界を任されている部門、商品を任されている部門が、それぞれの現場に合った型を作ればいい。それぞれの現場にいる見込み客の性向を考えて、どのようにアプローチして、どのように接触をすれば継続訪問が許されるかという観点から営業の型を作るべきである。

孫子の兵法書に「勝と知るに五有り」とあり、1項から4項までの文言と内容を、前回までに考察してきた。5項では「将能にして君御せざる者は勝つ」とある。直訳すれば、将軍が有能であれば、君主は余計な口を出すなと言っているが、裏を返せば、将軍が作戦に精通していなければ君主は一時的に指揮権を取り上げて一軍の指揮をせよ、ということになる。

営業マン個人が有能であれば、客先開拓営業のやり方は本人に任せなさい。しかし成果が出ないのが分かれば、現場での経験と現場にいる見込み客の性向を考えて部門長が客先開拓営業の型を新たに作り、全員一丸となって実践せよと命令すれば、成果は上がると孫子は言っている。

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