IoTやインダストリー4.0で高度化された工場、スマートファクトリーに向け、生産装置として産業用ロボットが多く採用される一方、搬送工程はいまだに「一定速度で一方向に流すだけ」のコンベアが主流。大量生産時代から考え方が変わっていない。もしコンベアで往復運動、速度や停止位置の制御が自在にできれば、今までの生産ラインを劇的に効率化できる。それを可能にしたのが、ヤマハ発動機のリニアコンベアモジュール「LCM100」だ。
同社は、単軸ロボットから、XY制御の直交ロボット、3軸のスカラロボット、6軸・7軸のアーム型の多関節ロボットまで、フルラインアップしている世界でもユニークなロボットメーカー。ユーザーの要望や用途、工程によって最適な提案ができるのが特徴だ。
中でもLCM100は、「つながる、ひろがる、つくりだす」をコンセプトに、最先端のロボット技術をベースに開発した次世代コンベア。リニアモータとスライダ、コントローラで構成され、コントローラでスライダの速さや停止位置、加減速などを自在に制御できる。
これまでの搬送工程は一定方向に一定のスピードでラインを“流す”コンベアが主流だった。一つの製品を大量に安く造るためには有効だったが、そのままでは第4次産業革命のマスカスタマイゼーション、混流生産など新たなニーズへの対応は難しくなっている。同製品は従来のコンベアに代わり、フレキシブルな生産ラインを構築できると期待されている。
同製品は、リニアモータでスライダが動き、最大3000ミリ/秒の高速搬送が可能。ストッパーやセンサなどを使わずに、加速/減速、停止位置、前進/後退の制御もできる。
またモジュール構造で、連結・取り外しするだけで長さを自在に変更可能。分岐や合流、循環などもでき、これまで流れ作業しかなかったコンベアの枠を超えた、まったく新しい概念で、柔軟な搬送ラインを構築できる。タクトタイムの短縮に大きく貢献する。
生産する製品が変わり、ラインの構成が変わっても、モジュールは引き続き使えて経済的。不要な場合も保管して、再度使うことができる。壊れた時もモジュールを入れ替えるだけなので、保守運用面でも優れている。ガイド剛性が高く、スライダを直接支持するので、スライダ上で直接作業が可能。コンベアでは作業台への引き込みが必要だったが、それが不要になり、省スペース化とタクトタイムの短縮につながる。
すでにヤマハ発動機社内でも電動自転車PASのスピードメーター組み立てラインで使われている。
今後について、同社IM事業部村松啓且ロボットビジネス部長は「ロボットコンベアを含めたトータルソリューション提案で、製造業の競争力強化に貢献していきたい」と述べた。