■進化した情報技術を使い倒す「モノ作りからサービスへ」シフト
先週に引き続き、Industrie4.0に対し、いくつか先進的な企業の取り組みに目を向けてみましょう。
■キメの細かさが効率アップと最適化を実現
■Tesla(テスラ社)
電気自動車には、従来の内燃機関の自動車とは異なる特徴があります。すべて電気制御ですので、デジタル化との相性も抜群です。車載プログラムの更新はディーラーへ入庫しなくても遠隔地からネットワーク経由で行えます。充電は、自宅コンセントや外出先の充電スタンドから行うだけでなく、減速時にはモータの回転により発電させることができます。これにより、従来の電気自動車より長い走行距離の運転を可能にしています。
そして、このような状況はドライバーがディスプレー画面などを通じて把握し、より効率良く運転をするためのフィードバックを得られるのです。ここにも、IoTやモバイル、アナリティクスなどの技術が活用されています。
■Nest Labs
サーモスタットを用いて、室温の自動制御を行う会社です。多くの人が最も快適と感じるカ氏72℃(セ氏約22℃)に近づけるように自律制御を行います。こういったセンサ技術で自律的にさまざまな環境を制御することにより、最適化を目指し、スマートホームの実現などに貢献しています。ここではIoT、およびフィードバックのためのアナリティクス技術が活用されています。
■Networked Harbor
本件はSAPとして直接関わっているところですが、港湾における業務を効率化、最適化する仕組みを構築しています。貨物の状況に基づき、タンカーやコンテナトレーラ、クレーンはいつどうあるべきかをシミュレーションし、事前に指示を出します。そのためには、タンカーやトレーラの位置情報や貨物状況のトラッキングを常に行う必要があります。
定刻通りの動きであれば、大きな問題はありませんが、遅れや予定変更がありますと、事前の計画を即座に変更し、コンテナやクレーンの配置を換えなければなりません。また、悪天候時など危険な状況がある場合には、気象状況や海の状況なども考慮に入れ、最適なオペレーションを予測する必要があります。このような場合には、ビッグデータの高速処理が非常に大きな役割を果たします。
壊れる前に直せ!-予測メンテナンス-
■風力発電、ハイデルベルグ社の業務用大型プリンター
業務用の大型設備は、メンテナンスが命です。ひとたび故障をしてしまうと修理や部品交換の手間やコストは大変大きなものになります。従来は定期点検という形で主に人手に頼ったメンテナンスを実施してきました。
しかしながら、実際の不具合というのは往々にして予兆があり、そこから実際の不具合にいたるのですが、要はそのタイミングで必ずしも定期点検が実施されるわけではありません。特に通常と異なった使い方や、異常な環境に置かれた場合には突発的な不具合が起きやすくなることがしばしばです。
ですから、常にモニタリングを実施し、予兆を察知した場合に、故障にいたる前に修理をしたり部品の交換をしてしまうことが肝要なのです。「壊れる前に直せ!」というわけです。
例えば、洋上の風力発電所の場合、その設備自体も大変高価なものですので、壊れてしまってから直すとなるとかなりのコストがかかることになります。加えて、洋上で大掛かりな修理を行うとなるとその手間も大きなものとなります。また、業務用の大型プリンターの場合も、修理自体も大変ですが、修理期間中は業務がストップしてしまうために機会損失が発生し、それに関わる人員も動けないために無駄が生じてしまうのです。
このような大型設備は、リアルタイムのモニタリングと故障の予兆を察知し対応することが重要で、そこではビッグデータの高速処理やアナリティクス、監視者や作業員向けのモバイルなどの技術が活用されています。
■進化した情報技術力を使いこなせ
今まで見てきたように、IoT、ビッグデータの高速処理、アナリティクス、予測分析、モバイルなどの活用が、これまでの業務やビジネスを変えていく推進力になっていることが分かります。SAPは、SAP
HANAによるビッグデータ処理をはじめ、アナリティクス、予測分析、モバイルなど一連のソリューションを提供しています。
また、これらのソリューションを強固かつ柔軟に支え、業務改革、事業開発、サービス立ち上げなどのスピードを上げるために、クラウドのソリューションを拡充させています。皆さまにはぜひとも、この進化した情報技術力を当たり前のものとしてご活用いただきたいと思います。
■Industrie4.0をともに実現するために
Industrie4.0は、工場のコンテクストから語られることが多いのですが、その広がりは工場を超えて、あらゆるモノが関与する世界に広がります。またそこでは、モノは作って終わりではなく、顧客にうまく使ってもらって継続的な関係構築をすることが大きな潮流となっています。まさにパラダイムが「モノ作りからサービスへ」シフトしているのです。
このようなパラダイムシフトを実現するためには、進化した情報技術を使い倒すことが重要で、それを制した企業が次世代の覇者になると信じています。ぜひとも皆さまと一緒に新しい世界を切り開いていきたいと考えています。
(SAPジャパン山﨑秀一)
SAPジャパンの超リアルタイムビジネスが変える常識
http://www.sapjp.com/blog/”