第4次産業革命、インダストリー4.0、IoTなど製造業を取り巻く新たなムーブメントが、世界的に動き始めそうだ。4月25日からのハノーバーメッセでは、ドイツのメルケル首相と米国のオバマ大統領が出席し、意見交換をする予定。日本でも安倍首相がドイツとの協力を明言するなど、インダストリー4.0を契機とする産業変革の波は政府間レベルまで波及しはじめている。
安倍晋三総理を中心とする日本政府は12日、総理大臣官邸で第5回「未来投資に向けた官民対話」を開催し、第4次産業革命、イノベーションについて議論した。安倍総理は「世界に先駆けた第4次産業革命を実現していく。製造現場の強みを共有するドイツと協力し、国際標準化を進める」などとのべた。
官民対話には安倍総理、林幹雄経済産業大臣、高市早苗総務大臣ら主要閣僚と、榊原定征経団連会長、三村明夫日本商工会議所会頭、小林喜光経済同友会代表幹事、上野朝大CA Tech Kids代表取締役社長、金丸恭文フューチャー代表取締役会長兼社長グループCEO、関山和秀Spiber取締役兼代表執行役などが参加。
主要テーマとして第4次産業革命への対応が話し合われ、第4次産業革命の鍵は、オープンイノベーションの実践とデータ利活用であるとした。
これらを実現する具体的な方針として、大学の研究力強化のため、企業から大学や研究開発法人への投資を今後10年間で3倍に増加。さらに産学の戦略研究拠点を来年度中に5カ所設置。人工知能の研究開発と産業化のロードマップを今年度中に策定し、「人工知能技術戦略会議」を創設する。また地域のベンチャー企業と世界市場をつなげる中核組織を今年度中に創設を目指す。
第4次産業革命に向けては、企業や組織の枠を超えてデータを集め、分析してビジネスにつなげていくことが大事とし、データ共有・活用のためのプラットフォームを作る予定。
製造分野では、現場のデータを工場や企業の枠を超えて共有・活用できるシステムを、2020年までに50カ所作る。またドイツと協力し、国際標準化を進めるとした。
自動運転については、18年までに自動走行地図を実用化する。自動車メーカー、地図メーカー間で仕様を統一して国際標準化提案を行う。
医療関連では、新薬や治療の研究に生かすため、治療や検査の大量のデータを簡便に収集し、安全に管理・匿名化する機関を作る法制度を、来年度中に整備するとしている。また個の状況にあった『個別化健康サービス』の提供を実現するため、今年度中に医療機関や企業・保険者が有するレセプト・健診・健康データを、集約・分析する実証事業を開始する。
中小企業の第4次産業革命への対応については、20年までにロボット導入コストを2割削減、ロボットシステムの導入を支援する人材を3万人に倍増を計画。あわせて、中小企業のIT化をサポートするため、今後2年間で1万社にIT専門家を派遣するとしている。
さらに、人材育成に対しても初等教育から高等教育まで第4次産業革命を支える人材育成・教育施策が必要であると指摘した。