■さらなる高付加価値を生み出す 技術革新と斬新なアイデアで
ドイツが産官学一体となって取り組んでいる「インダストリー4.0」。日本のメディアでも取り上げられることが多く、皆さまもIndustrie4.0というキーワードに触れる機会が多くなってきているのではないでしょうか。ドイツに本社を構えるSAPもIndustrie4.0をリードする企業として、さまざまな取り組みを行っています。
そこで、今まさにSAPを取り巻くIndustrie4.0について整理するとともに、SAPがどのように貢献しているかご紹介したいと思います。
■Industrie4.0とその背景
生産活動を図る指標として、労働生産性(投入した労働量に対して、どれだけの生産量が算出されるかを表す指標)というものがあります。ドイツの製造業は1990年後半まで世界でトップの労働生産性を誇っていました。しかしそれ以降、米国の労働生産性が非常に伸びたため、経済産業省の通商白書2013によると、現時点では米国を100とするとドイツは77.9程度であると見られています。また、日本はというと69.9という状況です。労働生産性という観点で米国をベンチマークしますと、ドイツ、日本ともまだまだ改善の余地があるといえます。
一方で、ドイツが一貫して取り組んできたのが技術革新です。ドイツには中規模企業が多く、それらの企業が高付加価値な製品・サービスを生み出し続けてきた歴史があります。産官学一体となってIndustrie4.0に取り組むことで労働生産性を向上し、さらなる高付加価値製品・サービスを生み出し、グローバルで優位に立つ、これこそが今まさにドイツがIndustrie4.0に取り組もうとしている背景です。
■ドイツの新ハイテク戦略とIndustrie4.0
ドイツの技術革新を支えてきた大きな動きが、06年に策定したハイテク戦略です。策定当時は珍しかった省庁横断型の取り組みで、14年にはその最新版「Die neue Hightech-Strategie Innovationen fur Deutschland(新ハイテク戦略ドイツのイノベーション)」として改定されています。
ドイツは、この新ハイテク戦略を「グローバルなイノベーションリーダーへの道を進めるドイツの目標」と定め、それはつまり「技術革新と斬新なアイデアは付加価値の高い製品やサービスを生み出し、それが人々の生活の質を向上させ繁栄をもたらします。そして、それがドイツの地位を強化させる」としています。
ドイツの新ハイテク戦略は、その技術革新を以下の五つの主要要素でまとめています。
・将来の価値創造と生活の質を向上する六つの最優先タスク
・産官学のネットワーキング
・経済におけるイノベーションのダイナミクスを推進
・イノベーションを起こすための刺激的な環境
・取り組みの透明性と市民の参画
Industrie4.0は、1の「六つの最優先タスク」のうちの一つ「デジタル経済と社会」の中の一項目として、スマートデータ、クラウドコンピューティングなどと並んで位置づけられています。
また、新ハイテク戦略を実行していく上での下記四つのアプローチのうち、最初の「10の未来プロジェクト」の一つとしてもIndustrie4.0は位置づけられています。
・10の未来プロジェクト
・連邦、州、ヨーロッパでの連携
・効果分析をすることによる投資の国民への説明
・中央諮問機関の設置
新ハイテク戦略におけるIndustrie4.0の記述を下記に抜粋しますが、新ハイテク戦略策定の背景となるこれからの主要外部環境には、顧客の多種多様な仕様/リードタイム/コスト削減などの要求の増加、少子化による労働力の減少、テクノロジーの進化、エネルギー/環境問題の深刻化などがあげられます。これらについては「六つの最優先タスク」「10の未来プロジェクト」で他のタスク、プロジェクトとして解決すべきこととしても取り上げられており、Industrie4.0はこれらの外部環境への対応にも深く関連しています。
現在、われわれは第4の産業革命のステージにさしかかっています。第1は水と蒸気による機械的な生産、第2は電気を使った大量生産、第3はITで電気を使った自動生産、そして第4がサイバーフィジカルシステムをベースとした生産です。
第4の産業革命における、これからの工業生産の特徴は、製品のカスタマイズを高度に柔軟に行うこと、顧客やビジネスパートナーと早期に関与すること、生産と質の高いサービスの連携が求められることです。
(SAPジャパン 大西嘉明)
SAPジャパンの超リアルタイムビジネスが変える常識
http://www.sapjp.com/blog/