「世界中のものづくりを愛する人のために!」を掲げ、FOAの普及を進める奥雅春社長に、現在のIoTの課題とFOAについて聞いた。
–IoTに対する、日本の製造業の対応について、どう見ているか?
外国の後追いで慌てているという印象だ。日本の製造業はこれまで、さまざまな工夫を凝らして、ここまで成長してきた。その日本のよさと強みを生かして、一歩先行くようなITの仕組みが必要とされている。
–それはどのようなものか?
生産現場に必要なのはIoTではなく、IoTとIoPを組み合わせた「IoE」だと考えている。Pは人(Person)で、EはEverything。これを実現するためには、組織感度を上げ、人の力をもっと生かす仕組みが重要となる。それを実現する一つの形がFOAだ。
–FOAはいつごろ始まったのか?
FOAの原型は30年前に始まり2009年に今のコンセプトの形にたどり着いた。
当時、日本流のものづくりの仕組みを海外工場に取り入れようとしたがうまくいかなかった。作業する人(Man)、使う機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)の4Mが日本とは極端に異なっていたのが原因だ。
そこで、4Mが異なる環境でも日本の仕組みをシステマチックにできないかと考え、着目したのが、現場で使われる“言葉”だ。
作業員同士は現場の言葉を使い、必ず5W1Hを入れて状況を共有する。日本の現場は、それが全員に共有されているからうまく回っている。現場で使われている言葉をきちんと定義し、情報短冊という形で共有するのがFOAの原点だ。
–FOAでは誰もがデータを扱い、活用できる。
現場は生きている。時系列で生のデータを見ないと新たな兆候は見えない。誰もが生データを見られる環境を作ることは重要だ。
たとえば経営層であっても、自分が持っているイメージと実際の現場のギャップを埋めるために、現場のデータは見たいもの。しかし、今のIoTの仕組みでは、生データを見るためには専門家にデータ出しを依頼しなければならない。これではスピードが足りない。
FOAは、作業者から役員まですべての人、グローバルの拠点でも情報短冊を見て、データを使うことができ、その場で判断し行動することができる。自らデータを扱うようになれば自然と気付きを生む。人が自由にデータを使える空間が広がるのもFOAのメリットだ。
–今後について
生産現場をよくするには、IoTやAI、ロボットも不可欠になる。でもそれだけではないはずだ。組織感度を強化し、人の能力を生かすことも重要なはず。FOAとAIやロボットを両立させ、共創することで相乗効果が生むことができる。
FOAは日本流のIoTとして、シスコシステムズをはじめ、多くの企業から注目していただいている。今後、FIMコンソーシアムの活動も合わせ、より多くの方へ気楽に使っていただけるようなFOAを目指して研磨していきたい。