トヨタ自動車は、産業用イーサネットの標準として「EtherCAT(イーサキャット)」を全面的に採用することを決定した。4月25日から29日までドイツで行われていた、ハノーバー・メッセのETG(EtherCAT Technology Group)プレスカンファレンスで、同社の大倉守彦先進技術開発カンパニー工程改善部長が明らかにした。採用を決めた理由として、その高速性とEteherCAT Pによる省配線を挙げている。
大倉氏は「トヨタが今後、新たに稼働させていく新工場にてEtherCATを最大限に活用する。EtherCATはオープンな技術であることに加え、高速で同期性能が高く、省配線の特長を持っている。これらは当社の生産システムを、IoTのコンセプトに基づいて、さらに進化させていくためのニーズに合致するとの結論に至った」としている。
なかでもEtherCAT Pの省配線を高く評価。「新技術であるEtherCAT Pに大きく注目している。通信と電力を単一のケーブルに統合するコンセプトはトヨタの『リーン生産方式:TPS』の考え方にピタリと合致する。ケーブルは1本でも少ない方が良い。ETGの仕様として公開されるための準備が進められているが、これを当社とコミュニティが速やかに使えるように積極的に協力していきたい」(大倉氏)。
ETGのマーティン・ロスタンエグゼクティブディレクターは「世界最大の自動車メーカーのトヨタは、極めて高い品質と生産性を実現する生産戦略で知られ、製造業のリーダーとして他の多くの企業や業界がその成功を模範としている。今回の決定は、自動車業界に限らず他の業界でも、グローバルにEtherCAT採用の加速を促すことになるだろう」と歓迎している。
地元のサプライヤーなど関係各社には、EtherCATの採用をすでに連絡済み。大倉氏は「工場でのIoTの利活用を推進していくためには、EtherCAT対応機器などを速やかに調達できることが不可欠だ。サプライヤーには品質とコストパフォーマンスが高いEtherCAT対応機器を遅滞なく供給することをお願いしたい。地元の設備仕入れ先には3月に案内を差し上げたが、ハノーバーメッセでは世界の他の国々のサプライヤーにも同様の案内をしている」という。