ジャパンユニックスのはんだ付技術基礎知識(5)

■IPC導入事例 vol.1 日本精工
『自社規格との併用で品質向上とコスト削減を同時に実現 (後篇)』

–IPCを使った効果、良かった点を教えてください。

これまで社内で統一化に苦労していた品質基準をIPCに合わせることで、判断基準が明確になり、品質のバラツキによる不良率が軽減しました。供給をお願いしているサプライヤーさまもさまざまです。外部パートナー企業に対してもIPCの準拠を求め、安定した品質を保つことができるようになりました。

また、製造担当者と品質検査担当者が同じ判断基準を持てるようになり、コミュニケーションが取りやすくなったと感じます。一方で、社内規格も併用しています。IPCでは、多くの範囲をカバーしていますが、自社の製品特性を踏まえ、品質改善のために必要な工程は、自社規格として定めます。自社規格を多言語に翻訳をして他国へ展開するには、多大な労力とコストが発生します。既に翻訳されているIPCを幅広く採用することで、大幅なコストダウンと品質の安定化を同時に図ることができました。

同時に、国内外でサプライヤーが独自に規定している基準と国際基準との差異を特定することができます。それらの差異が発生した場合、サプライヤーと調整し、IPCを適用することで、顧客に対して安心して、一定した品質の製品を提供することができます。従って、言葉や商慣習の異なる顧客、各国の生産現場、多岐にわたるサプライヤーとの翻訳ツールとして、とても重宝しています。

–グローバルビジネスという観点でのメリットはいかがですか?

IPCは、日本語、英語はもちろん、中国語やタイ語など各国の言葉に翻訳されています。IPCをベースとした日本のマザー工場のやり方、品質基準を、世界各地の工場へ展開するのにとても役立っています。

また海外メーカーにとっては、取引先がIPCを採用していることは常識です。日本でも、海外メーカーとの取引がある企業は、IPCを使っています。しかし、国内取引が中心の中小企業では、IPCという単語を知っていても、実際に使っている企業は多くありません。

日本でビジネスをしているとJISで事足ります。でも世界に一歩踏み出した瞬間、IPCが必須になります。今後、海外メーカーから受注するためにも、日本企業はもっとIPCに取り組む方が良いと思います。グローバルに事業を展開する際には、必ずと言って良いほど、IPCに直面します。また、新規事業へ参入する際に、どの程度まで品質基準を定めるか悩ましいところがあります。その場合は、IPCを基準に国際的に認められた品質基準からスタートし、徐々に自社規格を定めることで、より良い品質へ改善をしていくことが可能です。

国外にも生産工場がありますが、現地生産・共有のため、日本企業以外からの現地工場への直接取引が増加しています。国内外の現場レベルとIPCの国際標準に統一化していくことで、日本のみならず、現地工場と現地進出企業との取引においても、品質意識の共有化がしやすく、信頼が得られやすいというメリットがあります。

–IPCを検討している企業へアドバイス

IPCは写真やイメージなどで作業を詳しく解説してくれていて、とても分かりやすい。教科書や参考書のようなもので、これを基準にし、自社用に活用すれば、オペレータにも的確に指示が出せるようになります。海外メーカーとの関係構築にも重要です。IPCは、製造の効率化、品質の均一化、ビジネスの拡大など、さまざまな面に良い効果を及ぼします。ぜひうまく使ってほしいですね。

■ 製造業のグローバルスタンダードIPC
IPCは、グローバルメーカーが一堂に会し、エレクトロニクス製造において詳細な標準化を規定している。80年代には、当時のMIL規格をIPCに移管。以来、IPC-J-STDとして更新・管理している。NASAやBAE

SystEMS、ボーイング社、エアバス社、GEなど宇宙・航空産業のトップメーカーも参画し、製造業における実質的な、グローバルスタンダードとして各国で活用されている。

■ ジャパンユニックスのはんだ付技術
ジャパンユニックスは、IPCと業務提携し、日本展開を支援し、はんだ付ロボットのトップメーカーとして国内外に製品を提供。はんだ付を科学的に分析するソルダリングラボを有し、高い技術を持つはんだ付のスペシャリスト「ソルダリングエンジニア」を育成、顧客へのはんだ付アドバイスを行う。ラボには、世界中から先端テクノロジーが持ち込まれ、はんだ付ロボットによる実装テストなどの依頼が集まる。今後、IPCとの提携により、グローバルスタンダードを熟知したはんだ付ロボットメーカーとして、さらなる高品質な製品・サービスを国内外の顧客に提供していく。

〈問い合わせ〉㈱ジャパンユニックス03-3588-0551

■ジャパンユニックス(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。

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