光電・近接センサは、FA用途を中心に、社会インフラ関連、民生分野まで幅広い市場で使用されている。高精度化・高品質化・高速化が求められる中で、光電・近接センサの果たす役割は大きく、センサの代表としての地位を確保している。
光電・近接センサの中心市場はFA用途で、半導体・液晶製造装置などの電子機器製造関連、自動車製造関連、食品・医薬・化粧品製造関連が大きな分野として挙げられる。
日本電気制御機器工業会(NECA)による検出用スイッチの2015年度(15年4月~16年3月)の出荷額は、前年度比91.3%の1036億円となっている。価格の低下や海外市場、特に中国などアジアの新興国の需要低迷が大きく影響し、前年度実績を割り込んだ。NECAでは16年度の出荷額を前年度比103%の1065億円を予測している。
NECAの検出用スイッチの出荷のうち、光電・近接センサは3分の1の約350億円と大きな割合を占めており、伸び率も全体の伸びより高くなっている。
また、NECAの出荷統計に参加していないセンサメーカーも多いことから、実際の市場規模はこの1.5~2倍ぐらいあるものと推定される。
光電・近接センサの大きな用途となっている半導体・液晶製造装置分野は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の調べによると、15年度の半導体・液晶製造装置の出荷額は1兆5786億円(前年度比7.4%増)で、16年度は1兆7722億円(同5.5%増)と堅調な見通しとなっている。また、15年の世界の半導体製造装置販売額は365億ドルで、14年比3%減少した。
日本工作機械工業会(JMTBA)のまとめた15年度の工作機械の受注額は1兆3989億円(前年度比11.4%減)と2桁の減少となったが、それでも過去4番目と高水準で、中でも内需は5793億円(9.9%増)と前年度比2桁近い伸びと好調を維持している。ロボットの生産も年々拡大基調で、15年は前年比約6%増の6300億円なった。16年は、国内での需要増に加え、米国でのさらなる景気拡大と製造業回帰による堅調な伸び、中国の減速経済下にあっても自動化投資への高い意欲、さらには欧米を中心に盛り上がる第4次産業革命やIoTを通じた産業用ロボットへの関心の高まりなどもあり、今年は海外需要の拡大が期待できることから、約6%増の6700億円までの拡大見通しとなっている。
自動車の生産投資も期待が高まっている。国内は既存生産ラインのリニューアル投資が見込まれ、海外は北米・南米での新規の生産ライン増設計画が明らかになっている。
需要が安定していると言われる食品・医薬品・化粧品のいわゆる3品業界でも継続した投資となっている。他の分野とは異なる機能が要求されることもあり、光電・近接センサメーカーにとっては、新製品や新しいアプリケーション開発につながるとして、重視しているところが多い。
非FA分野の工場以外の用途でも光電・近接センサの使用が増えている。安全・防護に対応して、駅のホームでの転落防止用扉や、道路のトンネル前での車両の高さ検知、駐車場での侵入検知用途など、屋外や交通分野などでアプリケーションが拡大している。
■「製品+ソリューション提案」活発化
光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適。このほか超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
FA分野では、隙間などにも取り付けられ、光ファイバー部を交換するだけでさまざまな用途に対応できる光ファイバー式のアンプ分離型の需要が多いが、最近はアンプ内蔵でも小型化が著しく、極端な狭隘(きょうあい)の用途を除き採用が増加傾向にある。
半導体や液晶製造装置分野では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から、光電センサの使用が多い。
小型化と長距離検出、高い保護特性などが進展しており、検出距離50メートル、保護構造IP67やIP69Kなどの特性を持つ製品は、粉塵や水のかかることが多い食品機械向けでの使用が多い。
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、より精度の高い検出を実現した製品の開発が進んでおり、カメラ、照明、カラーモニタを一体化したセンサも好評を得ている。
3品業界では、例えばペットボトルや瓶の混在検出、透明容器の検出、液など中身の有無による検出などといった業種独自のセンシングニーズがあり、これに光電センサが安定して検出する調整の難しさがある。このようにユーザーのニーズに各センサメーカーは独自のオートチューニング機能で調整を容易にしたり、用途を限定した専用センサ開発などで対応している。
新機能の光電センサでは、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式、デュアル感度補正機能で、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないといった製品も販売されている。
さらに、あらゆる対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測する。
光電センサを内蔵したエンコーダでは、移動速度750メートル/分まで対応でき、直線だけでなく曲げ半径0.5メートルの曲線部にも設置可能なエンコーダもある。このタイプは、非接触での設置を簡単にするために、各種の通信ネットワークに接続できる。
近接センサは、耐環境性に優れ、高温・多湿、防爆雰囲気、水中などで使用できるといった特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に、光電センサとは異なった市場・用途を形成している。
オールメタルタイプも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。
検出距離は、数ミリから数十ミリが一般的だが、300ミリぐらいまで対応できるタイプや、リニア近接タイプでは検出距離を0、50、100ミリと調節することができるなど、多様な種類がある。
光電・近接センサは、日本メーカーとドイツメーカーが品ぞろえを充実し、国内外で販売を展開している。用途がFA以外にも拡大していることで、今後の市場拡大への期待は高いが、単価が下落しており、FA用途を中心にシステム販売やソリューション提案への取り組みが活発化している。