日本を含めた先進国にとって、自国の企業の生産拠点がコストの安い海外に行ってしまうのは頭の痛い問題。しかし第4次産業革命は、そうした構図が変化しつつある。海外各国は国内回帰をどう考え、どんな取り組みを行っているのか。
経済産業省が発行した「ものづくり白書」によると、イギリスやアメリカ、フランス、ドイツ、韓国など先進国の多くが企業の国内回帰に対して積極的な支援を行っており、税制や金融支援、コンサルティングなどを実施している。なかでも成功しているのが、イギリスとアメリカだという。
イギリスでは、製造業の国内回帰を支援する国家的プロジェクトとして2014年に「Reshore UK」をスタート。さらに、政府主催による事業計画コンテストなど、国内回帰企業に対し優遇支援を行っている。その結果、自動車やIT、製薬などの生産拠点が中国やインドからイギリス国内に戻り、繊維や玩具といった産業でも国内で生産拠点を作る動きが出ているという。
例えば、自動車メーカーのアストンマーチンは、政府から160万ポンドの補助金を受け、12年に生産をオーストリアから移管。15年には本社工場を拡大し、さらに国内新工場も予定している。「ラズパイ」の愛称で知られる超小型コンピュータメーカーのラズベリーパイも、13年に生産の大半を中国から国内に移管。売上高世界6位の製薬会社グラクソ・スミスクラインも12年に政府の税減免を受け、国内での生産能力を増強するなど、国内投資が盛んになっているという。
アメリカでは、ITや製薬、医療機器、航空宇宙産業などハイテク産業の拠点が国内に集積している。さらに、各州政府が税制優遇や規制緩和などの企業誘致に積極的で、自動車や素材、消費財などの大量生産型の産業も国内回帰が進んでいる。
例えば、テスラモーターズ、GM、フォードなどは、国内工場を増強。アップルも中国や台湾のEMSに製造委託していた製品を国内生産に切り替える「Made In USA」を進め、13年からはMacProの生産をテキサス工場で行っている。
日本でも大手企業による大規模投資、新工場の計画は少なくない。化粧品の資生堂は、スキンケア化粧品のマザー工場となる新・大阪工場を茨木市に建設する。総投資額は400億円で、協働ロボットを導入するなど、先進的な工場になる予定。またファナックも1000億円かけて栃木壬生工場を建設。NC装置とサーボモータの生産力を増強している。