ジャパンユニックスのはんだ付技術基礎知識(10)

■“つかない”ものに“つく”超音波が生み出す新たな未来 不可能だった素材にも

これまでのはんだ付は基本的に『はんだと金属』を接合するものでした。超音波はんだ付は『ガラスとはんだ』、『セラミックスとはんだ』といったようにはんだと非金属を接合できる、注目の工法です。近年、世界的に自然エネルギーの普及が進むなか、ソーラーパネルのガラス素材に電極を付ける用途などで多く使われるようになりました。

今回は、はんだ付の可能性をさらに広げる超音波はんだ付について解説します。

■常識を覆す工法。ガラスなど酸化物へもはんだ付ができる超音

超音波はんだ付はガラスやセラミックス、アルマイトなど、従来のはんだ付では接合できなかったものにはんだ付ができる技術です。通常はんだ付をする場合、表面の酸化物を除去するのが基本です。しかし、超音波はんだ付が使われるガラスやセラミックス、アルマイトはそれ自体が酸化物であり、従来のはんだ付とは異なった原理で結合させています。また、通常のはんだ付ではフラックスを必要としますが、超音波ではフラックス無しでもはんだ付が可能です。

■超音波のキャビテーション効果

液体に超音波振動を与えると、振幅の圧力差によって気泡状の小さい空洞が発生します。この現象をキャビテーション(cavIty=空洞)と言い、この空洞が大気圧によってつぶされ、その時、大きなエネルギーを発生させます。その空洞の寿命は5万秒分の1と言われ、超音波はんだ付はこのキャビテーションによる瞬間エネルギーを応用しています。

超音波はんだ付システムは、ヒーターで加熱したこて先から約60KHzの超音波を発振しながらはんだ付を行います。振動子により発振された超音波がホーンを介して、こて先に伝わります。はんだ付母材と溶融はんだの境界付近には、超音波のキャビテーション効果により、真空の空洞(泡)が発生します。

アルミニウムやステンレスなどは、はんだ付が不可能なわけではありません。従来は、母材が有する強固な酸化被膜を除去するため、より強力なフラックスを用いてはんだ付が行われました。ただ、昨今のRoHS指令や環境規制により、強力な酸を含むフラックスの使用が避けられるようになりました。そこで注目されているのが超音波によるフラックスフリーでのはんだ付です。超音波はんだ付ではフラックスの代わりに、キャビテーションの空洞が破裂する際に発生するエネルギーによって酸化被膜を除去してはんだ付を行います。従って、酸化被膜を除去した後のはんだ付では通常のはんだ付と同じく、反応層が形成されます。

■対非金属の結合原理:酸素による共有結合

一方、素材そのものが酸化物であるガラスやセラミックスの場合、キャビテーションのエネルギーで酸化被膜を除去することができません。この場合、キャビテーションの破裂エネルギーを活用して、接着面の空気層や有機物、異物などを除去します。その後、真空の泡の効果で大気中から取り込まれた酸素を媒介に、母材である酸化物とはんだの金属元素が共有結合して、はんだ付が完成すると考えられています。そのため、対非金属では、界面に反応層が形成されません。

このように、結合原理はそれぞれ異なりますが、これまで難しかったはんだ付を可能にしたのが「超音波はんだ付」です。

■広がる超音波はんだの活用用途:ソーラーパネル、モーター、航空機など

利用用途はソーラーパネルのガラス面への電極接合を筆頭に、アルミニウムやセラミックスなどはんだ付が難しいと言われていた難はんだ材に大きな威力を発揮します。自動車の頭脳であるMCUは、外部ノイズを遮断するため総アルミニウムの筐体内部に収められますが、そこでのはんだ付を超音波で行うことがあります。近年、モーターのコイルやトランスは軽量化とコストダウンのために銅線ではなくアルミ線を使用されることが増えています。航空機の計器などにもよく使われており、そのはんだ付でも超音波は活躍しています。

はんだ付はこれまで弱電の分野が中心でした。しかし、超音波やレーザーはんだ付など新しい工法や技術進化の結果、より小さく微細なものから大電流の大きな、さらにはこれまで不可能だったガラスのようなものまでカバーする範囲が広がっています。ジャパンユニックスでは、基本となるこてはんだ付からレーザー、超音波と幅広い工法技術と知識を持ち、専用ロボットを使ったはんだ付の自動化・合理化も行っています。はんだ付に関して、お困りごとがあれば、当社までお問い合わせください。

■ジャパンユニックス■
(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。
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