IoT時代の製造業ITソリューション(1)

■1.1. ITの潮流と製造業の革新が交差する世界

クラウドコンピューティング、ビッグデータに続いて、IoT(Internet of Things)がキーワードとなっている。そして、IoTの登場とともに、次世代の製造業IT戦略としてIndustrie4.0 、Industrial Internetが大きく取り上げられている。

製造分野はこれまでもIT化の進展とともに生産技術を高度化させ、進展してきた。しかし、IoTやIndustrie4.0などの登場により、製造業はこれまでにない変革の渦にのみ込まれようとしている。

現在、国内におけるIoTの議論をみると、“いかに現場にセンサーを取り付け、ビジネスモデルを組んでいくのか”という論点で語られているものが多い。しかし、ものづくりの進展は、古くから「統合」がキーワードであった。それはCIMとして提唱されていたことを思い起こせば理解いただけるだろう。つまり、部分最適ではなく、統合化による全体最適を目指すことが、製造業にとって古くから重要視されていたことなのである。

ここへきてIoTやIndustrie4.0、Industrial Internetなどが注目されているのは、さまざまな論点があろう。しかし間違いないのは、類似の概念が昨今のICTテクノロジーの進展により、発展的に実現できる目途が立ってきたという背景があるということだ。理想の完成には20年先、30年先ともいわれる概念であるが、部分的には既に実現している事実でもある。

既にSIerには製造業のクライアントからIoT実現へ向けたPoC(Proof Of Concept概念検証)の引合いが増えていると聞くが、多くは粒度の小さい部分最適を目指した動きといえるだろう。

しかし、いまわれわれは、IoTという大きな変革の入り口に立っている。であるならば、まずは大きな方向性を理解し、不透明な将来へ向けた準備をするべきだろう。そのためには、全体最適へ向けた製造業IT戦略を理解するのが先決だ。この連載では、まず、クラウドコンピューティング以降のITトレンドの概要を紹介する。次いで、これまでの製造業のIT化の歴史を振り返る。次世代の製造業のIT戦略は、製造業のこれまでのIT化の流れとITトレンドの変化とが交差した先の姿といえる。

■矢野経済研究所 主任研究員 忌部 佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士

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