工場の生産現場では、第四次産業革命やIoTなどが脚光を浴びる前から省配線を目的に、各メーカー独自の省配線システムが活用されてきたが、最近では物理層としてEthernetを活用したオープンな規格が本格普及し、各規格のシェア争いが激しくなっている。そのため、毎年生産設備に多額の投資を行い、サプライヤへの影響力も強い自働車メーカーの動向は業界でも注目を集めている。
トヨタ自動車の工程改善部大倉守彦部長は、7月22日に開催されたEtherCAT Technology Group(ETG)メンバーミーティングにおいて、同社の工場内における産業オープンネットワークとしてEtherCATを選択した背景などについて基調講演を行った。
同社はIoT技術やビッグデータ技術を「商品企画」「自動運転」「アフターサービス」などで活用しているが、生技・生産分野においても役立てている。その様ななかで、「カイゼン」「見える化」などの言葉に代表されるトヨタ生産方式においても、IoT技術を積極的に活用。ビッグデータから生産性向上のためのフロアマネジメントを支援する仕組み作りを積極的に加速させている。もちろんビッグデータの収集のためには、生産現場の情報を吸い上げる仕組みが必須だ。
そのため、生産性が高いスマートな工場を実現するにあたり、クラウドの活用、現場の高度化されたセンサー群の導入などとあわせ、旧来の機器メーカー(サプライヤ)依存ではなく、デファクトスタンダードな通信仕様を採用することによる制御・情報システムの刷新を模索していた。特に現場の生産設備の頭脳にあたるPLC層の通信規格においては、特定メーカーに依存したものではなく、複数メーカーから最適な製品が選定できるオープンかつデファクトスタンダードな通信規格を求めていた。
複数の候補があがるなか、ETGはスレーブ側の電源も通信線と同一ケーブルで配線可能な「EtherCAT P」規格を発表。トヨタの検証によると、配線費用は従来主に採用していた規格に比べ3割減、さらに速度性能も約2倍になると見込まれている。
さらに新規設備導入時はもちろん、稼動後の設備トラブルの主要因である断線などのトラブル原因の追究にも大きなメリットがあり、設備稼働率の向上に寄与すると判断された。
既に現場で採用されている既存ネットワークについて大倉部長は「すぐに既存ネットワークを置き換えることは想定していないが、新規設備やリニューアル時にはEtherCATを積極的に採用していきたい、ロボットメーカーや機器メーカー、サプライヤなど、多くの協力企業からも賛同を得られている」と述べた。