日立製作所は、ダイセルの協力のもと、製造現場における作業員の逸脱動作やライン設備の動作不具合などの予兆を検出し、品質改善や生産性向上を支援する画像解析システムを開発した。
■MESと連動、品質・生産性を向上
今回開発した画像解析システムは、3M(Man、Machine、Material)の観点から、作業員の動作計測のため3次元形状を取得できる距離カメラを用い、人物の手や肘、肩といった関節位置情報を取得。現場でのヒアリングや観察をもとに、腕や足の長さといった作業とは直接関係ない情報を除去した標準動作モデルを作成し、実際の作業員の関節位置情報に基づいたデータと標準動作モデルを統計的に比較することにより、逸脱動作を判定する。設備や材料の不具合についても、通常画像との差分分析により異常を検知できる。
また、MESと連動することにより、溶接不良についても高速カメラによる発光部色分析と既存設備の電流、電圧データなどを併用し、異常検知が可能。大量の画像データから品質改善や生産性向上に関する情報だけをリアルタイムに抽出し、データ解析することで、不具合の早期発見や品質の安定化、作業効率の改善に活用できる。
製造現場の画像データを蓄積し、製品シリアル単位で最終製品と連携させ、不具合品が発生した際に原因の生産工程を特定し、改善施策を行うことが可能。さらに、生産工程に不適切な作業が発見された際には、シリアル単位で最終製品を追跡できるなど、マルチトレーサビリティを実現できる。
日立とダイセルは2015年2月から、エアバッグの基幹部品を製造しているダイセル播磨工場(兵庫県たつの市)で、同システムの実用化に向けた実証試験を共同で実施してきた。その結果、本画像解析システムをMES(製造実行管理システム)と連動させることにより、品質保証をロット単位での代表点管理から、製品シリアル単位での全点管理(人、設備、材料の状態を連続的に監視する)へ移行でき、製品の工程内保証率を格段に向上できることが分かった。さらに、現場管理監督者の役割を、事後処置中心の対応から、得られた画像データを活用した傾向監視や予防処置に移行することで、不具合の未然防止にも役立つことを発見した。
両社は16年度中に、同システムを播磨工場で本格的に運用開始し、ダイセルの海外主要6工場への展開も進めていく。