世界一のロボット需要国である中国は、ロボット利活用だけでなく、国内ロボットメーカーの育成に力を注ぎ、近年さらにその勢いが増している。また美的集団が世界トップのロボットメーカーであるKUKAを買収するなど、世界に大きなインパクトを与えている。そんな中国ロボット業界のいまを紹介する。
2015年の世界のロボット販売台数は24万8000台。このうち中国は約4分の1となる約6万7000台を占め、16年には約20%増の8万台近くまで伸びる見込みだ。また中国では、現在作業員1万人あたりのロボット稼働台数は36台で世界28位にとどまっており、世界トップである韓国の478台、日本の315台、ドイツの282台には遠く及んでいない。これに対し、5年間で1万人あたり150台まで増やし、世界トップ10入りすることを目標に掲げている。
一方で日本の15年の販売台数は3万6000台。政府がロボット政策をサポートしているにもかかわらず、中国に大きく差をつけられている。この違いについて、あるロボットメーカーの経営幹部はこう分析する。
「日本は自動車や電子機器を中心に早い段階でロボット導入が進んでいて、いまは成熟市場だ。ロボットは単純な繰り返し動作の生産工程に導入したほうが、生産性が上がり、製品品質も安定すると言われている。中国にはこうしたロボット活用に適した大量生産型の工場が非常に多いことも導入が増えている背景にある。特に自動車のように一つのラインを使い、ある程度の時間をかけながらも同じ動作を繰り返し、安定した数量で生産を行う作業には最適で、人件費の上昇や人手確保などへの対策上からも導入が加速している」。
中国ではロボット導入で生産効率化が進む一方、悩みもある。「中国ロボットメーカーの育成」だ。販売台数こそ世界ナンバーワンだが、そこで売れているのは海外メーカーがほとんど。安川電機、ファナック、KUKA、ABBのいわゆる世界四大メーカーをはじめとする海外メーカー製が大半を占める。13年は69%が海外メーカー製だった。
これに対し中国政府は危機感を抱き、国産ロボットメーカーの育成に力を入れ始めた。中国版インダストリー4.0である「中国製造2025」でもロボットは重点項目になっていて、メード・イン・チャイナの強化と相まって支援強化を進めている。さらに、国産メーカートップ10社が集まって協力体制を固めるなど、官民挙げた動きが目立っている。中国政府は20年末までに中国ロボットメーカーのシェアを50%まで引き上げることを目標としており、日本をはじめ、海外ロボットメーカーにとって大きな脅威となっている。