CYBERDYNE(茨城県つくば市、山海嘉之代表取締役社長)は、福島県郡山市で進めてきた次世代ロボットの生産拠点が完成し、22日に竣工式を開催した。同工場は単に自動化されたFA工場ではなく、山海社長が提唱しているサイバニクス技術を駆使し、熟練者の技能が組み込まれたロボットと、働く人とが協調しながら生産を行うという次世代の生産工程を目指すとしている。
同工場ではロボットスーツ「HAL」をはじめ、手のひらサイズの心電・動脈硬化計、その他の各種バイタルセンシングシステムなど、革新的サイバニクス技術を駆使した製品などを製造する。その一方、同工場は、「第4次産業革命、インダストリー4.0を超える革新的生産技術」を開拓する拠点としても活動していく。
具体的には、ベテラン技術者がHALなどのロボットスーツを装着し、その動作に関わる人の信号、データを収集。これをAIや機械学習を駆使して分析し、ロボットスーツをはじめとしたロボットや各装置にベテラン技術者の技能を教え込む。これにより、通常のロボットのような位置決めや動作のティーチングをすることなく、熟練者と同レベルの作業を再現できるような製造工程の実現に取り組んでいくという。
同社によると「HALは、人間が動く時に脳から出る信号を読み取って、装着者がこうしたいという考えを認識して動く。熟練者の動きなど、さまざまな信号を読み取り、それをAIで実際に再現できるようにするなどを考えている」という。
また製造現場における搬送に、自律型の搬送ロボットを利用。従来の磁気テープなどマーカーの上を走り、変更がききづらいAGVに対し、自律型搬送ロボットはマーカーレス。センサでリアルタイムに状況を把握してマッピングしながら自由に動くことができる。「机や棚などをセンサで認識し、ぶつからずに移動できる。すでに羽田空港やツムラの工場でも使われている」(同社)という。
竣工式では、山海社長のほか、内堀雅雄福島県知事らが出席。HAL介護支援タイプを装着してテープカットを行うなど盛大に行われた。同社は「福島県は国内屈指の医療関連産業の一大集積地であり、この地に新たな生産拠点を整備することで医療機器産業や生産系ロボット技術のさらなる発展につなげたい。新しい生産の仕組みによって福島の復興・再生に貢献できればと考えている」と話した。