PLMは当初、2次元CADや3次元CADのデータを管理する機能(PDM=Product Data Management)が中心であった。PDMにより、CADデータを設計段階から生産段階、および関連企業まで共用することにより、大幅なリードタイムの短縮とコスト削減が実現した。その後、環境対応、品質管理、原材料管理など、さまざまなモジュールが追加され、PLMが完成する。PLMは現在、製品企画、設計、生産、保守サービスにいたるまでのプロダクト・ライフサイクル全体を管理するシステムに発展している。
製造業で最も普及したIT技術といえば、CAD(Computer Aided Design)であろう。1960年初めころより登場し、特に航空機産業で先進的に進められた。ロッキード社は1964年から汎用CADソフトウエアCADAMの開発に着手し、1967年に完成させている。CADAMは2次元の図面を作製するシステムであったが、その後、1970年代に入り、CADは多数のメーカーに普及するようになっていった。
1970年代になると3次元CADの開発も始まり、マクドネル・ダグラス社は航空機の設計システムとしてUNIGRAPHICSを開発している。UNIGRAPHICSは航空機開発用の3次元CADであり、当初は流体解析用のモデリングツールとして開発された。その後、航空機部品の切削加工を行うためのNC機能(CAM)が開発・付加された。3次元CADとCAMが、初めて融合したシステムであった。
また、米国ストラクチュアル・ダイナミクス・リサーチ・コーポレーション(SDRC)社は有限要素法による解析(CAE)システムI-deasを開発した。そのためのモデリングツールとして、I-deasソリッドモデラーが開発されている。こちらは3次元CADとCAEが、初めて融合したシステムとして知られている。
こうして、3次元CADとCAM、CAEは一体的に発展してきた。3次元CADが、当初はCAEにデータを提供するモデリングツールとしてスタートしたことは、いまとなっては意外に思われる方も多いだろう。呼称も3次元CADとCAM、CAEは一体化し、CAD/CAM/CAEと言われることが多い。
同時期(1970年代)に、こうしたツール群を統合すべきとして謳われたのが、CIM(Computer Integrated Manufacturing)である。CADやCAMをはじめとする各種ツール群を連携し、統合環境を構築しようとする概念である。しかしながら、その実現の難しさなどから、CIMは徐々に下火になっていった。
他方、CIMと類似するものとして、FA(Factory Automation)が進展した。1980年代にはFAは自動化の重要技術として日本では普及しており、現場のものづくりの効率化に貢献した。また、POP(Point of Production 生産時点情報システム)やバーコードシステムなどが発展し、個別工程の自動化などが進んでいった。そのほかにも、情報ネットワークを活用した電子かんばんなど、日本のものづくり革新は現場主導で行われ、国内製造業は大いに発展したといえる。
『2015 IoT時代の製造業ITソリューション -インダストリ4.0など次世代ものづくりとITベンダの戦略-』(矢野経済研究所 180,000円)より一部転載
■矢野経済研究所 主任研究員 忌部 佳史
2004年矢野経済研究所入社。情報通信関連の市場調査、コンサルテーション、マーケティング戦略立案支援などを担当。現在は、製造業システムなどを含むエンタープライズIT全般およびビッグデータ、IoT、AIなどの先進テクノロジーの動向調査・研究を行っている。経済産業省登録 中小企業診断士