「デジタル化」と「オムニチャネル」がサプライチェーンモデルを変える
消費者の利便性向上 顧客エンゲージメント強化 低コスト、短時間で販売を
■「デジタル」と「オムニチャネル」がもたらす製造業メリットの具体例
ここでは「鮮度の高い顧客ニーズを利用した時のメリット」の一つである「消費者の利便性向上、顧客エンゲージメントの強化」に関して、具体的な例を利用して掘り下げていきたいと思います。
例として、まず商品を図のようなカテゴリ分けをしてみます。
商品販売にはさまざまな訴求ポイントがありますが、最初に考えることはコストと時間をかけて販売するべき商品か、ITを活用してできるだけコストや時間をかけないで販売するべき商品であるかの検討です。「デジタル化」と「オムニチャネル」を活用するべきポイントとしては、現時点では後者が向いていると思います。なぜなら、小売りの世界ではO2O(Online to offline)のように、デジタルの世界で顧客と接点をつくり、そこから店舗に誘導して人が対応するといったこともよく行われています。しかし、店舗を持たないメーカの場合は、小売り側へ誘導するか、オンラインに特化した戦略が必要になるからです。
次に考えることは「デジタル化」が有効な商品カテゴリを見極めることです。今回の例では、顧客視点で見た場合、特価品や日用品などは「いかに安いか」「いかに便利に購入できるか」が差別化ポイントであって、商品自体に深いこだわりが持たれないと想定できます。つまり人が対面で対応する必要性が低いということです。こうした取り組みに活用されているのが「B2B向けEC」です。メーカ直販で定期的な利益を得られるだけでなく、顧客企業の購買担当と絆(カスタマーエンゲージメント)を構築することで、潜在的な顧客ニーズの把握も可能になり、必要に応じて営業が直接訪問して高額商材の提案機会も得られる可能性も出てくるわけです。
補足として、SAPではメーカが素早く「B2B向けEC」を立ち上げるために「アクセラレータ」(SAP hybris commerce accelerator)というECテンプレートも提供しております。メーカに求められる標準的な機能が盛り込まれているため短期導入も可能になります。
一般的なECシステムの場合、フロントの注文は受け付けても、バックオフィス側の在庫管理や出荷処理、会計処理などは連携する仕組みを構築する必要がありますが、SAPが提供するECの仕組みはSAPのERPと連携させる仕組みも標準でご提供可能になっています。
■「デジタル化」時代に対応させるSAPのデジタルコア“SAPS/4HANA”とは
今までのご説明から「デジタル化」や「オムニチャネル」による革新で、サプライチェーンの構造にも変化をもたらし、企業と消費者の距離を近くすることが可能になりました。しかし、メーカが顧客の利便性を考慮した「新しい取り組み」を行う場合、顧客接点を見直すだけでは片手落ちになる可能性があります。フロントの仕組みであるECで手軽に購入できたとしても、そのバックオフィスで出荷や請求、会計処理などが連携され、最終的に滞りなくお客様に商品やサービスが提供されないと「顧客サービスレベル」は向上させることは出来ません。そして従来からこうしたバックオフィス処理にはERPが利用されてきました。これを「デジタル時代に対応させた仕組み(デジタルコア)」が、次世代のERP「SAPS/4HANA」なのです。
SAPS/4HANAは「デジタル化」最大のメリットである、デバイスや個人や組織、企業間の壁をいとも簡単に突破できる力を最大限に生かすため、さまざまな技術の見直しがされています。SAPS/4HANAでは、従来ERPで提供されてきた機能のリアルタイムに加え、クラウドやオンプレミス、メインフレームなどさまざまなチャネルから収集したトランザクションを含む「膨大な顧客情報」(ビッグデータ)を蓄積することが可能になっています。こうした「ビッグデータ」はHANAのインメモリ技術で高速に処理されるだけでなく、蓄積されている情報を「活用」から「資産」変換するためにOLTP/OLAPなどの分析エンジンも標準で統合されているのです。このため、分析にかかるプロセスまで自動化が可能になっています。
SAPは企業のデジタルトランスフォーメーション支援に関して、フロントオフィスからバックオフィスまでEnd to Endでソリューションを展開しております。今後の進化にもぜひご期待ください。
■SAPジャパン田中義幸