産業用ロボットQ&A(3)

Q以下の場合は、特別教育は不要か?
(1)柵の中に電源を切って入ることに徹する。
(2)柵の外からティーチすることに徹する。

A
■(1)について

安衛則第36条第31号本文カッコ書きには、「産業用ロボットの駆動源を遮断して行うものを除く」、同じく安衛則第36条第32号本文カッコ書きには「産業用ロボットの運転中に行うものに限る」との規定があります。

駆動源の遮断とは、(1)運転を停止させる(2)1次電源を切る(3)2次電源を切り駆動用モーターを止める、のほか(4)クラッチを切る場合も含みます。ただし、制御装置からの指令で自動的にクラッチの入る状態になっている場合は駆動源の遮断には該当しません。(1)~(3)が安全なのですが、(4)は産業用ロボットは運転中となっていますのでできれば避けたいのですが、通達ではこの場合も駆動源を遮断するに含むとしています。

第32号の「運転中に限る」とは、運転していない場合は特別教育は不要ということですが、運転中とはいかなる運転モードであろうとも、記憶装置の情報に基づき動く部分の原動機または制御装置のどちらか一方でも働いていれば運転中に該当します。またクラッチを切っているだけの場合も運転中となります。

以上のことから、教示、点検のいずれも、「電源を切る」が順守されるなら特別教育は必要ありません。

■(2)について

安衛則第36条第31号本文では、産業用ロボットの可動範囲内において行う教示等の作業を行う労働者に対して、と規定しているので、可動範囲外での教示に徹すれば特別教育は必要ありません。

しかしながら、物理的に可動範囲内での教示等ができない構造なら問題はありませんが、可動範囲内でも教示等ができる構造の産業用ロボットの場合、人間の意志は弱いものです。ついつい中での教示をしないとも限りません。

また、生産性向上のためや成果を上げるためには、作業員には多能工化が求められますので、なるべく特別教育を実施して、人材を有効に活用する方が良いと考えます。

出典:「産業用ロボットQ&A 100問」白﨑淳一郎著/労働新聞社刊(1,400円+税)

■白﨑淳一郎Junichirou Shirasaki
一般社団法人白﨑労務安全メンタル管理センター 代表理事
1947年北海道函館生まれ。1975年福島県で労働基準監督官として採用後、福島県相馬、東京八王子・上野・足立労働基準監督署長、東京産業保健推進センター副所長など務める。2007年より中央労働災害防止協会東京安全教育センターの講師としてRSTをはじめ、多くの講座で講師を担当。

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