「Microsoft Foresight」で「デジタルトランスフォーメーション」をテーマに、同社の平野拓也社長とJR東日本の小縣方樹取締役副会長が対談した。
■平野氏
JR東日本というと、安全や安心というイメージが強くある。これまで事業にどう取り組んできたのか?
■小縣氏
基本は鉄道事業で、144年間ビジネスモデルは変わっていない。より安全で早く、便利になってきた。
二つ目の柱は「生活サービス事業」で、駅構内やショッピングセンター、ホテルなど。他の多くの鉄道会社もやっているビジネスモデルで、収入の3分の1を占めている。第3の柱の「SUICA」は2003年に発行し、04年に電子マネー化した。マルチプルでビジネスモデルを多様にし、第4の柱として自社で車両を作るようになり、さらにコンサルティングで海外事業にも出て行っている。
デジタルトランスフォーメーションではシステム導入は大事だが、29年前に民営化された時、切符発行と新幹線の運行管理などシステムは三つしかなかった。それが今は927個もある。この間にマイクロソフトにはお世話になり、Windows95はリリース後にすぐ導入し、SQLサーバーも応用させていただいている。
■平野氏
第4次産業革命の中、今後の公共交通における展望は?
■小縣氏
UITP(国際公共交通連合)には、政府系からメーカー、幹線鉄道からメトロ、バス、トラムなど、世界中から1300を超える団体が加盟している。
私はプレジデントとして、今後、自動車は自動運転化してシェアリングになり、公共交通もイノベーションによって自動車と同じ方向に向かうだろうと世界中で話している。
その中で三つ大事なことがある。一つは「イノベーション」自分たちが自らの手でイノベーションを起こしていくこと。二つ目は「既存の公共交通と連携すること」。これによりドアツードアの時間を短くする。三つ目は「新しいモードとの連携」。出発点から到着するまで、これまでの公共交通とは別の新しいモードのシェアリングサービスとも協力し、全体を縮めることを考えないといけない。
今後、高齢化社会を迎える中で、真の意味で出発点から目的地まで、できるだけ早く到達できることを目指していく。
■平野氏
公共交通機関がビジネスも含めて変革するためには相当のビジョンと思い、リーダーシップが必要になる。どう取り組んでいるのか?
■小縣氏
予測困難な時代、コア事業でイノベーションを起こし続けることが重要だ。それがオープンイノベーションで外部と結びつくことで、まったく新しい商品やサービスになる。それが良いタイミングでマーケットに出てヒットする可能性がある。
例えば、スイカはソニーのFelioaとコラボレーションした。自社での車両製造も、はじめは車両製造のことだけ考えていたが、輸出の道が開けた。新幹線も320キロメートルで走行できるようにして海外に出て行った。
イノベーションとグローバリゼーションは相互作用があり、イノベーションとデジタルトランスフォーメーションは表裏一体。オープンイノベーションはグローバリゼーションとデジタルトランスフォーメーションを加速させ、逆にデジタルトランスフォーメーションはグローバリゼーションとオープンイノベーションを加速させていく。