■処理スループットを劇的に向上 リアルタイムにデータ集計を実現
以前、別のブログ記事(「SAP S/4HANA時代に求められる製造管理システムとは?」http://www.sapjp.com/blog/archives/14108)では、基幹システムとMESの統合により製造現場の可視化が実現され、その結果として製造リードタイム短縮やトラブルに対するアクションの打ち手を迅速に判断できるようになるなど、真のリアルタイムシステムであるSAP S/4HANA(以下、S/4HANAとする)がものづくり経営を進める企業の製品製造に対してどのように有効であるかをご紹介しました。
今回はさらに視点を広げて、真のリアルタイムシステムであるS/4HANAがものづくりそのもののプロセスをいかにダイナミックに支援できるのか、去る4月25日~29日にドイツのハノーバーで開催された世界最大級の産業見本市であるハノーバーメッセ2016のSAPブースで展示されたコンテンツをひもときながら見ていきたいと思います。
こちらがハノーバーメッセ2016のSAPブースの様子です。デジタルエコノミー時代においてビジネスをシンプルにつなげていく“Live Business Is Connected”のコンセプトの元、Showcaseとして三つのデモンストレーション展示が行われました。
■Hannover Messe-SAPブースのレイアウトとShowcase
・Showcase(1)Connected Product Lifecycle
・Showcase(2)Connected Manufacturing
・Showcase(3)Machine Manufacturing Analytics
来場者がその場で選んだ色や仕様に基づいてキーチェインが完全自動生産されるということでIoTを象徴するものとしてメディアに多く取り上げられていたのは二つ目のConnected Manufacturingですが、今回展示されたShowcaseはすべて、データ構造のシンプル化を行い、HANA上で集計テーブルなしにリアルタイムにデータ集計を実現することで処理スループットを劇的に向上させたS/4HANAにより組み立てられています。
■なぜS/4HANAなのか?
SAP Business Suite powered by SAP HANA(Suite on HANA:従来のERPをHANAデータベース上で稼働させる)との違いは何なのか?
よくお客さまから受けるご質問です。もちろん従来のSoH(Suite on
HANA)でもMES連携やHANAによるビッグデータ処理は可能ですので、つながったシステムの実現そのものは可能です。
では想像してみてください。上記をSoHで実現していたとして、顧客オーダーに変更が入った時に、即座に現場在庫の確認と調整をし、変更オーダーに基づくものぞろえを確保した上で納期回答をリアルタイムに行うことは可能でしょうか?
製造現場での突発的なトラブルにより納期に変更が発生してしまいそうな場合に、即座に全社のオーダー状況にひも付く全工場の製造進捗をリアルタイムに把握した上で正確な調整納期を提示することは可能でしょうか?
これらのケースへの対応は、別のブログ(「SAPHANAに合わせたアーキテクチャーの再構築-在庫およびMRP-」http://www.sapjp.com/blog/archives/14048)でご紹介したように、日中のバックフラッシュ処理と多頻度でのMRP実行による計画調整を可能としているS/4HANAでしか実現し得ることのできないものであることは明らかです。
その上で製品設計から顧客オーダーに基づく製造実行、製品製造品質や現場機器状況のモニタリングから蓄積され続けるビッグデータを活用した品質改善、予防保全。これらのシステム間連携を介すことなくすべて一つのS/4HANA上でつなげる、これがSAPの掲げる真の統合ERPによるConnected Businessの実現です。
■SAPジャパン 赤川有美