【製造現場への負担の懸念を払拭】
作業・機器情報、分析レポート介し可視化
■Showcase(1)Connected Product Lifecycle
一般的に設計時には原価企画に基づきコストシミュレーションを繰り返しながら設計調整を実施しますが、SAP Product Lifecycle Costing(PLC)により、Excel画面インターフェースからのコストシミュレーション実行が可能です。この時、統合されたS/4HANA上にある情報を読み込みながら、実データに基づくコストシミュレーションを可能としているのがPLCの特徴です。
例えば、設計作業中のBOMや製造リリース済みの類似製品BOM情報、また既にサプライヤと取引されている汎用部品のコスト契約情報、各製造拠点別に異なる設備や作業者の工数等の間接費情報…つながった基幹システム上には、最適な原価計画立案のために活用できるリアルな元ネタが既に数多く蓄積されています。
原価ターゲットが策定されたものに対して実際の設計が走りますが、CADで設計したモデル情報や設計図面や関連ドキュメントなど、全ての設計情報はSAP Engineering Control Center(ECTR)で統合管理されます。ECTRはマルチCADのコンセプトであるため、連携先CADに制約されることなく設計情報をS/4HANA上に取り込みながら設計作業の効率化を支援します。
都度の設計変更に対しても、CADでの設計変更情報はリアルタイムに次版としてS/4HANAに連携され、その情報を即時にPLCでコストシミュレーションして設計変更の妥当性を評価することが可能です。
またCADのモデル情報はS/4HANAへの連携時に自動で軽量化され、S/4HANAのさまざまなアプリケーション画面に組み込まれているビューワーで参照できるようになっています。例えば、製造リリース前の工程設計実施時に、この軽量化されたモデルデータを参照し作業工程をビジュアライズに確認しながらの工程計画立案が可能ですし、さらに、確定した作業工程手順はモデルデータへのアニメーション編集を加えて、製造現場へ動画形式の作業手順インストラクションとして配布することもできます。
■Showcase(2)Connected Manufacturing
実際に顧客からのオーダーはクラウドソリューションであるSAP Hybrisにて登録されます。この際にPSMで作成された「スーパーBOM」情報に対してHybrisで受けた顧客仕様のマッチングをかけ、顧客オーダーに基づく製造実行のための構成情報が引き当てられ、現場への製造指示に展開されます。
■製造現場では、指示情報がSAP
Manufacturing Intelligence(SAP MII)を介して、MESへシームレスに連携されます。またライン設備に対してはSAP Plant Connectivityという情報連携ツールを介した指示情報連携により、エッジ部分のコントローラーに毎回MESの指示を出すのではなくエッジ側で完全に自律した作業を行える環境を実現しています。マスカスタマイゼーション製品の製造に伴う現場への負担の懸念は、これらの仕組みにより払拭されることがご理解いただけるかと思います。
■Showcase(3)Machine Manufacturing Analytics
センサーからの現場作業情報や機器情報はHANA上で全てリアルタイムに分析レポートを介して可視化されます。リアルタイムな実績に基づくプロセス分析、品質分析が実行され、現在の製品品質のモニタリングだけでなく傾向値から将来起こり得る不具合の予測、品質改善のためのルートコーズ分析など、先んじた打ち手の改善活動を計画し実行するための強力な支援が可能です。不具合ゼロの実現、製品品質担保によるコンプライアンス維持は今後のグローバルものづくり企業には欠かせない要素であり、S/4HANAで統合されたシステム環境だからこそつながるデータを活用することが可能なのです。
■現場機器の稼働状況および品質モニタリングレポートサンプル
2015年11月にリリースされたS/4HANAは、今後も順次機能リリースを予定しています。SAPとNon-SAP製品、クラウドとオンプレミス、社内と社外、企業のものづくりに必要な全てのデータを一つにつなぐ、真のERPであるS/4HANAにより、マスカスタマイゼーションにビジネスを移行するための支援をSAPは提供します。
(SAPジャパン 赤川有美)