■第4次革命のものづくり 欠かせないメカ技術発展
1970年代に発表されたシニック理論によると、工業化社会の後には情報化社会がくる。そして最適化社会と続き次に自立社会がくると予想されていた。
昨年来、各種雑誌、新聞紙上をにぎわしているIoTやインダストリアルインターネット、あるいはものづくりにおけるインダストリー4.0などが機能する社会は、シニック理論による自立社会と言える。こうした社会の到来が日本で発表されたのは70年のシニック理論が最初であったようだ。
80年代に東京大学のプロジェクトチームが「どこでもコンピューター」という概念を提唱した。それがきっかけとなり、ユビキタスコンピューティングの世界が提唱された。
ユビキタスコンピューティングの世界とは、社会のあらゆる機器やデバイスにコンピューターが内蔵されている社会というものであったが、現在では、携帯・情報端末・Suicaなどの電子マネー・人工知能を搭載した電子レンジ・炊飯器などの家電製品などで実現されてきている。
90年代になって通信ネットワークの世界が大きく開かれると、ユビキタスコンピューティングを前提として、コンピューターが内蔵されているモノ同士が社会空間の中で通信し合うユビキタスネットワークとなった。ユビキタスコンピューティングとユビキタスネットワークが人々の生活に溶け込んでいる状態がユビキタス社会と言われてきた。
通信の世界ではインターネットの発展が世の中を一変させた。ユビキタス社会ではインターネット接続によって、マイコンチップを内蔵している世界中のあらゆるモノとモノが、通信し合うことが取り沙汰されている。その延長線上にIoTの概念がある。
また、ドイツが官民あげて大きな声で唱えているインダストリー4.0も、少し前から言われているクラウドコンピューティングも、少しずつ概念は違うが大ざっぱに言えばコンピューターと通信が結びつき、システムやソフトの開発次第で何でもできてしまう可能性があるという予測なのだ。いつかは予測される社会が出現するのであろうが地球的規模で富が増え続けている状態に比例して出現する。要するに経済的発展が永続しなければ絵に描いたモチとなる。
盛んに言われているIoTやインダストリー4.0の世界をつくり上げていくには経済的な基盤のほかにもう一つ必要なことがある。それはコンピューターと通信が会話した結果を、動力やアクチュエーターというメカ的技術をもって、クリアにサポートしなければならないことである。特にものづくりの製造業でドイツが提唱しているインダストリー4.0は、メカ的な技術が高度発展しなければ、多種生産を前提にしたコスト・リードタイム・品質のつくり込みは困難だ。
かつてほとんどのものは人が機械を操作してつくった。ものづくりに電気制御が取り入れられて、人の一部を電気制御が取って代わってきた。
当初シーケンス制御で命令は出せても、磁気や空圧・光や音波機器・ステッピングやサーボ機器・精巧な機械部品などのメカ技術が追いつかず、精度が粗く、形は重厚で音も大きかった。その後のメカ的技術の進歩により品質・精度が良くなり、納得したコストや形になった。電気制御とメカ的技術は常に追いつき、追い越しお互いの技術を磨いてきた。
これまで日本のものづくりは製造業現場が強いとされてきた。製造現場や機械装置メーカーの電気制御とメカ技術の向上がリードタイムを短縮し、品質をつくり込んできた。情報を駆使した第4次革命と言われているものづくりの世界では情報・制御技術が喧伝されているが、材料技術を始めとするメカ技術の総合的発展は欠かせなくなってくる。