デジタル・マニュファクチャリング・システムを駆使して、超短納期での切削や射出成形パーツの試作や小ロット受託製造サービスを提供するプロトラブズ(神奈川県座間市、トーマス・パン社長)が好調だ。このたび国内での事業拡大に向けた工場移転と設備・人員増強に対して7億円の投資の実施と、2色成形サービスなど新サービスの拡充を発表した。
■オンデマンドで受託製造 試作・小ロット部品
同社は1999年に米国で創業。もともとプリンタ開発者であった創業者が小型パーツの調達に苦労した経験から、デジタル技術を活用したオンデマンドによる受託製造サービスを開始した。
同社のサービスは超短納期が特徴。欲しいパーツの3D CADデータを同社ホームページにアップロードすると、同社で構造性解析を行い、平均3時間で見積もりを返信。そこから切削加工は3日、射出成形は10日程度でカスタムパーツを出荷する。一般的な射出成形品が見積もりからパーツ出荷まで20~60日かかるのに対し、約4分の1の納期で提供。2015年は世界の設計開発者から2万7000件の受注があった。
サービスを支えるシステムは、顧客からデジタルでデータを受け取ってから発注、見積もり、金型の設計からパーツ製造、出荷、顧客管理まですべてデジタルでつながっている。プロセス管理もデジタルで行い、デジタルマニュファクチャリングを実現。ビッキー・ホルトCEOは「これまで製造業では、ロボットや製造装置などをつなぐバックエンド側のデジタル化に熱心で、フロントエンド・プロセスの進化は遅れていた。当社はそこにデジタル技術を導入してオンデマンドで受託製造サービスを展開し、カスタムベース、ローボリュームのパーツを世界最速で提供することを実現している」とする。
日本では2009年に従業員数10人、約1000平方メートルの工場でスタート。12年に3000平方メートルに拡張移転し、16年には座間市の9000平方メートルの新工場に移転。新工場にはCNCマシニングセンタ32台、CNC旋盤3台、射出成形機11台を備え、射出成形は年間1500型以上、切削加工で4万5000パーツのキャパシティがある。
「日本はアジアのイノベーション、技術革新のハブ。多岐にわたるメーカーがあり、重要な産業が集積している」(ホルトCEO)とし、重要なマーケットとして注力。現在の顧客数は2200社まで拡大した。
今後さらなるサービス拡充を予定しており、16年度に2色成形サービス、ステンレスなど硬質材料の切削加工を開始する計画。さらに17年以降はISO90001、14001、27001取得に加え、粉末焼結、光造形など3Dプリンティングビジネスを開始する。同社日本法人のパン社長は「メカパーツを製造する企業はすべてがお客さま。新サービスの拡充でさらに多くのニーズに応えられるようになる」と話している。