スマートファクトリーへ第一歩
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 スマートファクトリーソリューション事業部は、プリント基板の実装工程についてシーメンスと連携し、他社の搬送・実装機械も含めた実装ライン全体の生産性を向上させる「統合ライン管理システム iLNB」を開発。26日から受注を開始し、3年間で100億円を見込む。
現在、電子機器製造業では嗜好の多様化や需要変動、製品サイクルの短期化などにより、少量多品種のマスカスタマイゼーションへの対応が必須となっている。その解決に向けて大きな障害となっているのが、製造工程のデジタル化。現在も属人的でアナログなアプローチのため生産効率の改善がなかなか進んでいない。
そうした状況に対し両社は、パナソニックの実装ラインにおける設備と製造実行システム、プロセスの知見と、シーメンスの産業用ソフトウエアと制御システムを融合し、実装ラインと工場全体における生産性向上に向けた統合ライン管理システムを開発した。
iLNBは「Integrated Line Network Box」の頭文字をとったもので、パナソニックのソフトウエアを組み込んだシーメンス製の産業用パソコンでライン全体を制御し、データ収集が可能になる。従来、他社設備の制御は別の制御用PCが必要だったが、同システムではパナソニック以外の設備も接続して制御できるのが最大の特徴だ。
「指定のインターフェースに従って情報を出せる設備であればつなげることができる。古い設備や能力が足りなくても、センサ等を外付けすれば大まかな情報で管理ができる。基本的につなげない装置はない」(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 青田広幸副社長)
同システムのベースとなっているネットワークプロトコルが「OPC-UA」であり、シーメンス デジタルファクトリー事業本部プロセス&ドライブ事業本部 島田太郎専務執行役員事業本部長は「OPCーUAはインダストリー4.0の通信プロトコルとして推奨されていて、世界の標準となるものをパナソニック様は採用した。将来性について有効な機能を取り込んだと考えている」と話した。
導入の効果について、段取り替えを自動化してライン停止時間を3分の1に短縮。従来は基板投入から部品実装、検査、排出まで一連の工程がすべて終了してからプログラムを手動で変更していたのに対し、同システムにより、各作業が終わった瞬間に自動で段取り替えを実行し、すぐに次の生産が開始できるようになった。「例えば自動車用のECUの製造工程では、1日に6〜8回の機種切り替えがある。大量生産のスマートフォンでも、1日2〜3回は変更があり、そのダウンタイムはバカにならない。そのロスを小さくできる」(青野副社長)という。
また両社は、工場全体の生産性向上に向けて「生産能力シミュレーター」も開発中。シーメンスの工場全体最適化ソフト「Plant Simulation」に、パナソニックが持つ実装プロセスのノウハウを合わせ、オペレーターの作業時間やライン全体の生産時間を算出し、最適な生産工程の設計ができるような仕組みを検討している。