IPC導入事例 vol.2 セレスティカ・ジャパン NEC宮城から外資系EMSへ組織転換の核となったIPC標準規格 (中篇)
◆セレスティカ・ジャパン 千葉達也氏
「IPC導入に先見の明 多分野対応可能がメリット」
-NEC時代にIPCを取り入れていたとは意外でした。てっきりセレスティカになってからIPCを取り入れたものと思っていました。
千葉氏 そうですね。当時の経営陣は先見の明があったのだと思います。
NEC時代は国内大手通信キャリア向けの製品を作る専門工場のような形でした。しかし、『これから先は、それだけでは経営リスクが大きく、他の企業からも仕事を取っていかなければいけない』と言われた記憶があります。
-当時からIPCを知っていたのですか?
いいえ、知りませんでした。同時期にNECアメリカがIPCの情報を入手しようとしていたということは聞いていましたが、IPCの具体的なところまでは分かっていませんでした。
上司に指示を受けてからは、世界にはどんな規格があるのか調べるところから始めました。そしてセレスティカやソレクトロン(現Flextronics)、フォックスコンなど海外大手EMSについて調べるうちに、彼らが当然のようにIPCを導入していることを知りました。
それから本格的にIPCを導入しようということになり、まずNEC宮城、福島、岩手の東北にある関連会社から技術スタッフを集めて「IPC-A-610D」の翻訳作業に取り組みました。
-翻訳してみていかがでしたか?
日本語化したものを、それまで自社で使っていた基準と見比べたところ、IPC通りだったところ、まったく違っていたところがあり、とても興味深かったです。私も含め、技術者にとって良い勉強になったと思います。
-当時の自社基準とはどういうものだったのですか?
当時、最も大きな顧客は、国内最大手の通信キャリアで、まずその顧客独自の伝送規格がありました。それを自社用にかみ砕いたものが自社基準です。取引先の伝送規格と自社基準を併用して使っていました。
IPCを導入した後は、自社基準とIPCを比較し、合致した部分としなかった部分を洗い出し、それぞれに判定基準を明確にして自社基準をIPCスタンードに合わせるようにしていきました。今も取引先通信キャリアの伝送規格と自社基準、IPCを併用して使っています。
-IPCを採用したメリットは?
2002年の買収に際し、セレスティカによる工場査察がありました。当社以外にもいくつかの工場の買収を検討していたようですが、最終的には当社とNEC山梨に決まりました。当時すでにIPCを導入していたので、セレスティカの求めることが理解できたことが大きかったのではないかと思います。もし、IPCすら知らない状態だったら、今はなかったかもしれません。また、NECから本格的なEMS事業へとスムーズに移行できたのは、IPCを採用していたことが大きかったと思います。02年当時は、国内ではIPCを要求するお客さまはいませんでした。でも、『お客さまの要求があってから対応していたら遅い』とお叱りを受けたでしょう。
またEMSは、さまざまなお客さまから仕事を受託します。通信機器だけではありません。IPCをはじめる前の自社基準はあくまで伝送規格であり、通信機器以外のお客さまにはまったく響きませんし、理解もされません。IPCは電子部品の実装に関する規格であり、EMSのための規格のようなものです。どんな分野のお客さまにも対応できるようになったというのは大きなメリットです。
製品をグローバルに供給する時にはIPCは不可欠です。2002年頃に比べると、今は、国内でもIPCに取り組んでいる、必要であるというお客さまが増えてきました。10年先を走り、ようやく実を結びはじめたという感じです。
(後篇に続く)
■ジャパンユニックス■
(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。
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