FA・電機大手各社の決算発表が出揃った。円高の影響を強く受け、多くが前年同期比を下回る結果となったが、為替影響を除くと前年並みかそれ以上で推移しており、基盤の強化が進んでいる。
三菱電機の産業メカトロニクス事業は、売上高は前年同期比7%減の6176億円、営業利益は同218億円減の621億円だった。FAシステム事業は、中国のスマートフォンや電気自動車関連の設備投資増加により受注は前年同期を上回ったが、国内の太陽光発電システム関連の投資減少と為替影響で売上が前年同期を下回った。
オムロンの制御機器事業(IAB)は、売上高は同7.4%減の1580億円、営業利益は同15%減の230億円。為替影響を除くとそれぞれ同1%増、同4%増となり堅調。制御機器事業は中国が好調。商品ラインナップの拡充とアプリケーションパッケージを揃え、注力業界であるデジタル機器と自動車、食品、社会インフラで同24%増収、商談1件あたりの採用アイテム数の増加、新規顧客数の開拓に成功し、同9%の増収となった。
通期の売上高は同7.1%減の3120億円、営業利益は430億円の見通し。国内は円高影響で改善投資の抑制が続くが、自動車の新規投資は堅調と見る。海外は、中国は減速するが自動車は堅調。韓国のデジタル投資の上期前倒しの影響、米国は自動車堅調、ヨーロッパは英国のEU離脱影響の緩和を見込む。
制御機器事業は「i-Automation!」をコンセプトとした成長戦略を進める。制御機器と安全機器、ロボットを組み合わせたアプリケーションパッケージによる革新的なオートメーションと、AI技術の活用による止まらない設備と不良品を作らない生産ライン、人とロボットの強調する生産現場の実現を進める。
富士電機のパワエレ機器は、為替影響により売上高は同6.3%減の915億円、営業利益は同24億円減の4億円の減収減益となった。ドライブ分野は、中国など海外のインバータ需要が減少。パワーサプライ分野は、堅調な海外の盤事業に対し、メガソーラー向けのパワコンの需要が減少。器具分野は工作機械など機械セットメーカーの需要が減少した。
産業インフラは、売上高は同22.4%増の806億円、営業利益は37億円増加してマイナス6億円となった。変電分野は国内産業向けの大口案件で増収増益、産業プラント分野は国内の省エネと更新需要、データセンター受け新規ソリューション事業の増加で増収増益。産業計測器機器分野は海外の需要が減少。設備工場分野は国内の大口工事により増収増益となった。
安川電機は、純利益は70億円の計画に対し85億円を計上し、上期計画を達成。対前年同期では為替の影響で減収減益となった。セグメント別では、モーションコントロールは、ACサーボが中国市場を中心にスマートフォンや自動車関連で堅調で、為替影響を受けるも販売量増加等で利益を確保。インバータは米国向け製品が低迷した。ロボットはヨーロッパで順調だが、中国の需要回復遅れが響いて減少。システムエンジニアリングは、鉄鋼プラントと社会インフラで設備更新をとらえたほか、風力発電関連が売上増加し、収益改善した。
通期では為替の影響で売上高を3900億円に下方修正。利益は据え置く。下期はACサーボ「Σ7」への切り替え加速、ロボット新製品の市場投入、環境エネルギー分野のコア事業化の加速、AI技術の開発強化やヨーロッパでのロボット生産拠点の設立など、開発力と生産力、販売力のクロスファンクション強化などに取り組む。
横河電機の制御事業は、受注高は同11.3%の1723億円、売上高は同8.7%減の1656億円、営業利益は同27.7%減の141億円となった。日本市場は底堅く堅調だったが、為替が受注199億円、売上186億円、営業利益39億円マイナスの大きな影響を与えた。
アズビルは、受注残高の積み上がりとアドバンスオートメーション(AA)事業、ビルオートメーション(BA)事業の売上高が増加して増収。営業利益も増収や事業構造変革の成果等で増加した。
セグメント別では、AA事業は半導体製造装置やエネルギー関連が増加するなど国内市場が伸長して増加。BA事業は国内堅調で、既設建物向けとサービス分野が増加して計画通りに進んでいる。ライフオートメーション(LA)事業は、住宅用全館空調の受注が堅調で、ガス・水道メーターも良かったことから増収で計画達成。中期計画の最終年度として、AA事業は第4次産業革命など事業構造の変化に対応した製品サービスで国内外成長を目指す。BA事業は計画通りに進み、オリンピック以降の既設建物改修への提案やローカル市場の開拓を進める。LA事業も順調で、エネルギーや製造装置領域を強化する。
パナソニックデバイスSUNXは、第2四半期累計ベースで過去最高の売上高を達成。カスタム部品と大口受注が貢献し、海外は中国が牽引。スマホ製造設備関連向けに売上が好調で、現地通貨ベースで前年18%増となった。
セグメント別では、センシングコントロールの売上高が同1.6%増の143億円、営業利益は27億円。プロセッシング機器の売上高は同1.2%減の47億円、営業利益は1300万円。Eco・カスタムの売上高は同2.2%増の37億円、営業利益は1億円となった。
IDECは、イネーブル装置など安全関連製品や防爆関連製品が堅調。製品別では、制御機器製品は安全関連製品が好調だったが、制御用操作スイッチなどが売上減少。制御装置およびFAシステム製品は、自動認識製品の売上は減少したが、プログラマブルコントローラが好調。制御用周辺機器製品は、スイッチング電源などの売上が減少。防爆・防災関連機器製品は、防爆形操作盤などの売上が堅調に推移。その他は、パワーコンディショナーが伸長したが、環境関連事業全体としては減少した。通期では前提為替レートの見直しにより売上高410億円、営業利益32億円に修正した。
日立製作所の社会・産業システムの売上高は同8%増の1兆298億円。営業利益は17億円減の150億円となった。鉄道システム事業が英国向けで売上を拡大したほか、海外の鉄道関連会社の買収により大幅な増収となった。
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上高は同8%減の6330億円、営業利益は202億円、純利益は469億円となった。インダストリアルは車載、産業向けが堅調だったが、テレビ向け液晶パネルの縮小や光ディスクドライブの事業終息の影響で減収。ファクトリーソリューションは産業インフラ向け実装機や統合フロアマネジメントシステムが伸長して増収となった。
2017年3月期第2四半期(累計)単位:億円
売上高 営業利益 純利益
日立製作所 43,537 ▲9.4% 2,328 ▲15.0% 1,135 16.3%
パナソニック 34,955 ▲7.0% 1,446 ▲28.0% 1,199 8.0%
東芝 25,790 ▲4.0% 968 1,153 309.0%
三菱電機 19,723 ▲4.0% 1,217 ▲4.0% 883 ▲5.0%
オムロン 3,716 ▲10.1% 259 ▲21.5% 158 ▲35.2%
富士電機 3,515 ▲0.8% 58 ▲14.7% 0 ▲99.5%
キーエンス※ 1,984 5.8% 1,035 3.2% 698 4.3%
安川電機 1,876 ▲9.8% 138 ▲27.2% 86 ▲28.4%
横河電機 1,846 ▲8.7% 145 ▲29.1% 103 ▲35.7%
アズビル 1,176 3.1% 49 39.1% 23 33.6%
パナソニックデバイスSUNX 228 1.1% 19 ▲16.5% 12 ▲24.6%
IDEC 202 ▲6.5% 15 ▲4.1% 8 ▲12.9%
※定款変更による変則決算のため、同社資料より作成
好業績一転、為替の逆風
各社の2015年度決算における為替レートは1ドル120円前後。各社が円安を追い風に好業績を連発したが、今期は一転して1ドル105〜110円の円高で推移し、為替の逆風を受ける結果となった。
三菱電機の15年度通期の売上計上レートは1ドル121円。今期の第2四半期累計では107円となり、為替の影響だけで売上高に対して約1270億円の減少となった。同様に、東芝は全社で売上2050億円、パナソニックは1622億円が減る結果となった。また横河電機は受注で211億円、売上198億円のマイナス、富士電機は売上146億円、安川電機は営業利益で109億円、オムロンも営業利益で84億円減少。IDECは純利益1.3億円の打撃を受けた。