時代に即した形必要
〜販売店の重要性は変わらず〜
一般産業のマーケットに電気関連の部品や機器商品を販売している商社は、メインの取り扱い商品によっておおよその区分がされている。一般的な言葉で言えば、電気材料商社、制御機器商社、電気計測器商社、機械工具商社、電子部品商社などである。
これらの商社を販売チャネルとして活用するメーカーは、生産する製品によって各種の業界団体に所属している。主だった団体で言えば、日本電機工業会(JEMA)、電子情報技術産業協会(JEITA)、日本電気制御機器工業会(NECA)日本電気計測器工業会(JEMIMA)などである。
一般産業マーケットの黎明期には、電気商品や機器商品を扱う商社は現在のように特色に応じて区別されていたわけではない。産業マーケットの力は弱く、各工場で使用する電気関連の設備の種類は少なかった。したがって購入する部品や機器商品も多岐に亘っていなかったので、電気関連の商品はすべて同一の商社からの購入であった。
半導体の実用化が進んだ頃には、産業マーケットの裾野が広がっていた。電子機構部品を搭載する家電や電子機器の組み立て工場や機械、車両の金属部品加工組み立て工場が全国に散らばった。各工場では電気関連部品や機器の購入が多岐に亘り、金額も増加した。需要家の工場では電気関連資材を同一の商社から数社購入に変えていった。納入商社は区分されて現在のように○○商社というレッテルを貼られるようになった。お客様となる工場へ部品や機器を供給するメーカーはセグメントされた○○商社との結びつきが強くなったのは当然のことである。
このように結びついた供給メーカーと販売商社との関係は“ディーラーヘルプ”という概念をもたらした。ディーラーヘルプという概念は当初、日本にはなかった。ディーラーヘルプという概念はアメリカからやって来て、日本の消費マーケットから始まった。デパートなどの大口販売店へ品物を供給する問屋やメーカーが応援部隊として社員を派遣したり、陳列ケースを貸して支援するようなことがディーラーヘルプだという理解から始まっていた。
産業マーケットが隆盛になり、供給メーカーにとって販売チャネルの確保は必要不可欠なものになると、供給メーカーと販売商社の間には販売契約が結ばれた。生産力は弱く、納期が大きな障害であった当時では、販売店は顧客へスムーズに納品したいという思いがあって、できれば在庫を持ちたかった。供給メーカーは安定した生産がしたいという思いがあって、在庫を豊富に持ってもらえる販売店は必要であった。
供給メーカーは在庫というバックアップを通して安定生産するため契約販売店への支援という形でディーラーヘルプの導入が始まり、消費市場向けディーラーヘルプを参考にしながら産業市場向けを構築してきた。現在ディーラーヘルプと言えば、供給メーカーが契約販売店に対して販売の援助全般を指している。具体的な内容としてはおおむね、(1)業界や同業者の情報や売れ筋情報の提供、(2)経営に関するアドバイス、(3)販売店の社員への商品教育や営業指導、(4)資金的援助や各種サービスのこととされている。情報社会の到来により、今後ますますインターネットや宅配を利用した販売が隆盛を究めていくだろうが、それでも販売店の重要性は失われることはない。
販売店と言ってもすべての販売店ではなく、ディーラーヘルプを介して結びつく販売店のことであり、今後はますます有用となる。ディーラーヘルプではメーカーが販売店促進のため、販売店支援契約をして規定の内容を実践すればいいというものでない。時代に合ったディーラーヘルプが必要なのだ。しかし厄介なものである。なぜなら一朝一夕では成し遂げられない組織能力なのだから。