若手技術者育成の盲点
〜見本となる指導者めざせ 基本姿勢は論理的思考力〜
若手技術者の育成の盲点とは何でしょうか。実は、若手技術者を現場で指導する指導者の育成です。よく指導者となる技術者の方と話をしていると、「最近の若手は根性が無い」「自分が若手の頃はもっと大変だった」という話をよくききます。しかし残念ながら指導者側のこのような発言のほとんどは何らかの脚色をされたものです。つまり、当の本人が思っているほど厳しい現実にさらされているわけではなく、若手の実力も当の本人の若いころと大差ないということです。
そのような昔話よりも若手技術者育成においての重要なのは、見本となる指導者の存在です。指導者側になった技術者はどうしても一般的な技術者の育成思考回路である「職人系」「体育会系」「軍隊系」「放置系」のどれかに偏ってしまいます。いずれの育成方法も若手技術者にとってはあまり好ましいやり方でないのは事実です。このような状態に陥らないためには、指導者側も自らの経験にあぐらをかくのではなく、自らの経験を踏まえ、それらを論理的に部下に伝えることで効率的に若手技術者を育成するという基本姿勢が求められます。
この基本姿勢のベースとなるのは、文章作成能力に裏付けられた論理的思考力です。頭の中に浮かんだことをそのまま述べる、経験則だけで断言する、自分の技術者のプライドで若手の意見を受け入れない、といったことを避けるには自らを客観的に律することができる論理的思考力が必須です。加えて、指導者側に求められる姿勢というものに、「任せて+フォローする」というものがあります。
よく、部下のあらゆる打ち合わせや出張に同行し、報告書だけ書かせる、というスタンスが多くみられます。当然、最初の頃は教育という観点から同行し、色々な作業をやらせることは必要です。しかし、それだけを続けていては、いつまでたっても部下は裁量権が得られず、上司の機嫌だけをうかがう人間となり、自主性が育まれません。
任せる、というのは放置とは違います。もし、部下が何か悩んで問題を抱えている、迷っている、というときに的確な助言を与えるフォローアップができるというのがとても重要です。つまり、任せられるだけの実績と知見が指導者側にあるということが求められます。このような「任せて+フォローする」という姿勢は部下にとって最高の信頼構築方法であり、若手技術者育成という観点では最短距離となります。
技術者育成研究所の提供する指導者側の教育プログラムでは論理的思考力を改善するための文章作成能力、「任せて+フォローする」という育成手法を中心に教育を行っていきます。また、継続フォローをご契約いただいた場合は、実業務をベースに、指導する側と指導される側のコミュニケーションを手助けし、実業務で育成プロセスが前進するようフォローアップいたします。
若手技術者の育成という底上げには、その底辺の上にいる指導者のスキルも重要なファクターになるということを認識しておくことが重要です。
■吉田 州一郎(よしだ しゅういちろう)
FRPコンサルタント。大手機械メーカーの航空機エンジン部門にて、10年以上にわたりFRPに関連する業務に従事。社内試作から始まったCFRP航空機エンジン部品の設計、認定開発、海外量産工場立ち上げを完了。本部品は先進性が高いという評価を得て、世界的FRP展示会JECにてInnovation award受賞。新規FRP材料研究においては、特許や海外科学誌への論文投稿掲載を推進し、Polymer Journal、Polymer Compositesをはじめとした科学誌に掲載。
−Professional member of Society of Plastics Engineers(SPE;米国プラスチック技術者協会)
−高分子学会 正会員
−先端材料技術協会 正会員
−繊維学会 正会員
−特定非営利法人インディペンデント・コントラクター協会(IC協会)正会員
−福井大学非常勤講師