はんだ付マーケットレポート(中篇)
◆はんだ付事情 各国の特徴
世界の製造業を支える一大エリアとして存在感が高まるASEAN地域。特に、土地や人件費など生産拠点としてのコストメリットはもちろん、アジアという巨大マーケットに近い国で生産、販売をする「地産地消」の観点からASEANを重視する企業も増えている。今回は、ASEANに属する国々の特徴とはんだ付事情を見ていく。
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3.マレーシア
マレーシアは、ゴムやガスなど天然資源が豊富だが、早くより工業化を進め、発展してきた。さまざまな分野で国産化を進め、特に自動車は、プロトンやプロドゥアといった自国メーカーが勃興し、現在マレーシア国内市場の6割を国産車が占めるまでになった。
その一方、同国も例に漏れずに、人件費が高騰傾向にある。外国企業の進出では、日系企業の割合が高く、特に家電の汎用品など、ローエンドな大量生産品が多い。これらの経験から、マレーシア国内で優秀なSI(システムインテグレーター)が多く、自動化能力が高い。
一方、ローエンド品製造により、コスト競争が非常に厳しい。従って、はんだ付ロボットだけでなく、はんだ付ユニットを購入し、現地SIがロボットや装置に搭載し、自動化のサポートを行うケースも多い。
4.インドネシア
インドネシアは、世界第4位の人口を有すが、1人当たりのGDPは、3500ドルほどで、世界平均(1万3410ドル)の半分に満たない。天然ガスから作るLNG、農業、鉱業が主。しかし、国内では、二輪車市場が活発化している。二輪車関連の電装部品などの企業が多く進出し、近年は自動車関連も増えてきた。
家電関連はマレーシアと同様、ローエンド品の生産が多い。現地の市場を背景とした汎用品の割合が多い。一方で、熟練労働者の育成に課題があり、量産向けに小型はんだ付ロボットや自動化設備の導入が進む。
5.ベトナム
ベトナムは、ASEANの中でも、賃金が安く、魅力的な生産拠点として期待されている。サムスン電子とキヤノンが大規模な電子機器の生産・サービス拠点を開設して注目を集めた。
ハノイとホーチミンという大都市が南北にあり、都市近郊に広大な工場用地を確保しやすいのも特徴のひとつだ。スマートフォンのようなハイエンドかつ大量生産品の製造拠点になっている。
一方、現地との合弁で設立する必要があるなど、隣国との違いがある。人件費の安さから、はんだ付は手作業で行っているケースもまだ見受けられる。ただ、最近では、付加価値品の製造も手掛けるようになり、小型はんだ付ロボットを導入し、セル生産で人とロボットが共存し、大量生産を支えている。
6.フィリピン
フィリピンは米国の影響を強く受け、米系企業が多い。セブ島など観光リゾート地が有名だが、その近郊に工場が設立されている。フィリピンは小さな島々で国土が形成されているため、高速道路や鉄道といった交通インフラの整備が進んでいない。輸送が船便中心のため、コスト高という難点がある。
フィリピンでは、直接現地工場からの効率化相談はまだ稀である。多くの場合は、メーカー本国で自動化ラインのプロジェクトが発足し、本国で検討された生産ラインを同国で設立する。
7.ミャンマー・カンボジア
ミャンマーは、社会情勢により経済が立ち遅れていたが、2010年に民政移管され、「アジアのフロンティア」と呼ばれて活発な投資が目立つ。カンボジアは、観光業と縫製業が成長し、両国ともに、より活発な工業およびモノづくり投資が期待される。
はんだ付事情においては、オペレーターの育成が始まったというところ。いかに早く、優れたオペレーターを育成できるかが問われている。インドネシアと同じく熟練工に代わり、ロボットによるはんだ付が導入されることも増えてきた。(続く)
■ジャパンユニックス■
(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。
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