Q
記録が残っていない場合、教育を行ったことを証明することができなくなるのか?
A
記録の証明で問題になるのは、民事と刑事の場合では異なります。民事の場合は消滅時効は10年間ですので、実施したということが立証できない限り裁判では敗訴になる可能性があります。
刑事では多くの場合、問題にするのは労基署だと思います。特に安衛法第59条第3項の特別教育の実施は、安衛法第119条第1項、第122条により6月以下の罰金または50万円以下の罰金という罰則が適用されていますので、この件で起訴するということは、おそらく特別教育未実施者が死亡もしくは重篤な災害に被災したということが予想されます。
労基署が刑事事件にするというときには、被災者の同僚からの事情聴取とか、本人の作業の仕方、そのほかの事情や証拠等を把握し、特別教育が実施されていないことを事業者が知りつつあえて業務をさせたと確信したからこそ行うので、この場合は記録が残っていなければ、おそらく送検は免れないものと思います。
ただし、3年以上前に特別教育を実施したが、その記録が残っていない場合は、労基署はよほどのこと(明らかに特別教育を実施していないことが周囲の同僚も知っているとか、事業者が未教育であることを認識しつつあえて業務に就かせたとか)がない限りそれ以上追及しないと思われます(日頃、労基署とどのような付き合い方をしてきたかも意外と大事です。ブラック企業で目を付けられているとか、是正勧告等を受けたが無視あるいは後ろ向きの態度などいろいろあります)。
いずれにしろ、特別教育の実施記録だけでなく定期自主検査や始業点検などの記録はできるだけ電子媒体(改ざんしにくい形で)にして残しておくことをお勧めします。
出典:「産業用ロボットQ&A 100問」白﨑淳一郎著/労働新聞社刊(1,400円+税)
■白﨑 淳一郎
Junichirou Shirasaki
一般社団法人 白﨑労務安全メンタル管理センター代表理事