「直売型」「チャネル販売型」
メーカー成長過程で選択
製品や設備の資材として部品や機器商品を作っているメーカーには、メーカー営業が直接マーケットに走る「直売型」と、販売店を経由してマーケットに売る「チャネル販売型」がある。
直売型メーカーには、部品や機器商品が組み込まれている機器メーカーに専用品として供給してきた企業が多い。直売型メーカーは、生産力、品質、価格に力が付いてくると同業界や関連業界に積極的に売り込みをかけて成長してきた企業である。
直売メーカーが専用品として作った部品や機器商品が産業市場全体に少しずつ染み出してくると、あっちこっちの販売店から引き合いが入る。直売型メーカーの多くは売り上げを伸ばすため、それらの販売店を活用しようとする。しかし意外と早く販売チャネル施策に力が入らなくなってしまうことが多い。
理由は、商品の性格によるが、数量が思ったほど多く出ず、また直売で専用市場を作り、顧客と直接話し合ってきた風土が出来上がっているため、製品開発の打ち合わせ、価格交渉事、納期打ち合わせ、生産量の確保など、販売店を介してマーケットに接触するという経験に戸惑ってしまう。
具体的にいえば、販売価格を取り決め、販売ツールの支援をし、商品勉強を数度開催して商品供給を行っても期待通りに動いてくれないし、思ったほど成果が出てこない。
さらに、市場では販売店同士が当該メーカーの商品を巡ってトラブルを起こす。販売既得権を振り回すだけで利用されているような感じを受け、費用対効果も悪いと思ってしまう。つまり、マーケットに対して直接の対応と間接の対応の違いを乗り越えるのが面倒くさくなってしまうのである。
一方、チャネル販売型のメーカーも最初から販売店を探して、販売契約を締結して販売を開始するメーカーは少ない。当初は直売型メーカーと同じく、直接マーケットの顧客に直売するところから始まる。供給商品の汎用性が高く、年数がたつにつれていろいろな製品に使用されるようになり、マーケットで少しずつ知られるようになる。やがて知らない販売店からの引き合いが増えるようになると販売チャネルの必要性を感じるようになる。
この時点では部品や機器商品のメーカーの営業には、直売課と特約店販売課が両立し、売り上げを競い合う。やがて販売商品の汎用性が高い故に販売店経由の売り上げの勢いが増してくると、新たな販売店を探し出して特約契約をするようになる。販売店の売り上げが増えてくると費用や効果の点から直売で市場をカバーするより、特約販売店経由でカバーした方がいいとの結論が出る。大手客は直売として残し、他の直売顧客は特約販売店に移して販売チャネル型メーカーとなる。
民生、業務系市場では、数量とコストの関係から間接販売に力は入らず、直売型のままが多いが、産業系の市場では数量と機種の多さの関係から、スタート時は一緒でも時間の経過とともに直売型とチャネル販売型に分かれていく。直売型やチャネル販売型になるのは、部品、機器製品の性質のせいもあるが、同じ系統の商品でも両方の型があるので、商品の性質ばかりにはできない。部品や機器商品メーカーが成長する過程で、直売に合った市場か、チャネル販売に合った市場化を選択していくからだ。
さらに分かれるターニングポイントがある。それはディーラーヘルプの概念を理解して、ディーラーヘルプという能力を組織をあげて組織能力にまで高めようとしたかどうかによって直売型かチャネル販売型かに分かれていく。