2012年から13年にかけて起きたMAKERS(メイカーズ)ブームで、一躍脚光を浴びた3Dプリンタ。数万円から十数万円で買える一般向け機種も数多く出て民生市場は盛り上がったが、近年はその熱も落ち着いている。その一方、いま産業用が新たな展開を見せている。試作品や治具製作などへの利用する企業が増え、さらに、樹脂以外にも金属材料が使える機種の登場や新規参入メーカーも出現してきた。今後、3Dプリンタはどうなり、産業にどんな影響を与えるのか?世界の物流大手であるDHLが、その最新動向調査レポートを発表した。
レポートでは、3Dプリンタ技術は市場こそ25年までに1800〜4900億米ドル(約21兆円〜57兆円)の成長と予想されるが、「大量生産に代わるものではなく、それを補完する役割を果たす」と結論づけている。補完する役割の中身として、3Dプリンタによってカスタマイズ製品や保守部品をより容易に製作できるようになり、使用場所の近く製造できるようになり、これまで以上に物流と製造の距離を縮める可能性があると指摘した。
すでに航空や重工業、自動車、そしてヘルスケア等の業界で3Dプリンタの導入と活用は進んでおり、ヘルスケア業界では、義手や義足など義肢装具から歯の矯正器具といった一品一様の製作で使われている。今後、特に影響を受けるのは、保守部品の物流であり、実際に、資源開発企業や宇宙機関、軍からも、都市や工場から遠く離れた現場で自律的に重要な保守部品を製造することなどにも使われていて、今後さらにそれが拡大していく。メーカーやユーザーが保守部品在庫を持たなくても、ユーザー企業が必要に応じて3Dプリンタで保守部品を製造したり、物流企業によるメーカーの保守部品の在庫保管と配送の代行や、緊急時によりスピーディーに部品の製造と配送を請け負うサービスなども出てくるとし、物流企業がより一層サプライチェーンに深く関わることになるだろうとまとめている。