医師の技術を支えるエレクトロニクスの裏側
〜最先端医療に「はんだ付ロボット」〜
医療機器には人命を救うという重要な役割があり、極めて高い品質と信頼性が求められる。そこでは、一般消費者製品や産業機器とは違った部品、材料を使い、特殊な設計がなされる。そのはんだ付も特別な技術とノウハウを必要とする。
■医療機器製造におけるはんだ付の重要性
健康や医療は、世界の共通課題。バイオやライフサイエンス、メディカル、ヘルスケアといった市場が拡大している。医療機器は、人命に直結するため、細心の注意を払って設計、開発、製造されなければならない。そして使用開始後は、長期にわたって、仕様通りの機能・性能を維持することが求められる。
医療機器は、MRI、CTスキャンといった、大型で精密な検査装置、超音波診断装置、医療用内視鏡、血圧計といった診断器具、治療器具まで、多くの製品が電子化されている。医療機器は、電子部品を実装した、極めて高品質で信頼性の高いエレクトロニクス製品の一種と言える。
機器の安定した稼働や信頼性を実現するためには、正しい製造技術と知識が重要だ。電子機器において故障や不良が最も多く発生する箇所は、電子部品と基板の接続部である。そこでの“未熟な”はんだ付によって接触不良や断線が発生する。長期間にわたり、高性能で正確な医療機器を提供するためには、高品質なはんだ付が重要となる。
■医療機器の特殊性:ロボット+はんだ付ノウハウで解決
医療機器のはんだ付では、大きく2つに分類できる。いずれも産業機器やコンシューマ製品よりも厳しい品質条件が求められる。
ひとつが、MRIやCTスキャンのような大型の診断装置向け。診断装置自体が1台で数千万円から数億円し、搭載されている基板も一品ものの特殊設計で、1枚あたり数百万円という場合も少なくない。はんだ付の品質に対する要求が極めて高く、生産量は多くない。しかし、その要求品質の高さから、人手による作業からロボットへの移行導入が進んでいる。
もうひとつが、心臓のペースメーカーや血圧計のような小型で、患者個人に対する製品として多くの数が出回るもの。カテーテルや胃カメラなど、人の体内に入ったり、触れたりするもので、基板や構成部品が小さく、細く、薄い。極小部品を高密度に実装するため、手作業では難しい。しかも、大量に生産をしなければならないという課題がある。
医療機器におけるはんだ付が難しいと言われる理由が、そこで使われる特殊なはんだ材料にもある。
通常の鉛フリーはんだは、すず、銀、銅の合金である程度、標準化されている。しかし医療機器の場合、金や銀の比率を高め、強度や腐食耐性などの特性を与える。当然、組成が変われば、適切な温度、流れ込み方、硬化の仕方も変わる。同時に、はんだ材料は高額になる。特殊なはんだ材料に対して、適切なアプローチを考慮しなければ、不良や故障、製造コスト上昇の原因になる。(続く)
■ジャパンユニックス■
(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。
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