日本電機工業会「製造業2030で情報発信」志賀 重範会長

新年明けましておめでとうございます。

2017年の年頭にあたり、謹んで所感を申し上げます。

昨年、海外では6月のBrexit、11月の米国大統領選でのトランプ候補選出、そして12月の韓国大統領職務停止など予想外の出来事が続きました。政治的には不確実性が増す中、世界経済はトランプ相場といわれるドル高、株高が続き、日本経済も企業収益・消費の持ち直しの動きがみられ、全体として上向きとなりました。

17年は、まずはトランプ政権の具体的政策、さらにはBrexitの行方を含めた欧州の動向、中国経済の状況など十分注視が必要ですが、政府の強力な経済政策のもと、成長と経済好循環のための未来投資、雇用と所得環境改善による消費回復などにより景気回復を確かなものとし、東京オリンピック・パラリンピックに向け、わが国経済が持続的に成長していくことを期待しております。

このような経済見通しの中、電機業界は引き続きエネルギー・環境問題の解決に向けた具体的推進、電機産業の成長戦略の推進、特にIoT、第4次産業革命の流れの中で、新たなモノづくり、サービス産業の創出に取り組み、Society5.0の推進を本格化させて参ります。

まず、エネルギー・環境問題については、世界情勢の不透明性が増す中、エネルギー・セキュリティの強化を図るとともに、地球環境面では全ての国が参加するパリ協定の具体的推進が期待されており、わが国も2030年における長期エネルギー需給見通し、及び国連に提出したわが国の温室効果ガス削減目標の実現を確実に進めていく必要があります。

省エネルギーについては、電機・電子業界の自主行動計画である「低炭素社会実行計画」のなかで「生産プロセスにおけるエネルギー原単位改善」、及び電機・電子業界が社会へ提供する「製品・サービスによるCO2排出抑制」を進め、冷蔵庫などの家電製品や、モーター・変圧器などのトップランナー制度も活用し、一層取り組んで参ります。

再生可能エネルギーでは、昨年国民負担の抑制と最大限の導入の両立との中で固定価格買取制度について、コストを抑制した効率的な導入への制度見直しが行われたことを踏まえ、長期的に安定的な電源の一つとしての導入拡大方策、そしてコスト低減や運用が多様化する上での様々な技術課題に取り組んで参ります。今後も大きな役割を担う火力発電については世界最高レベルの高効率かつ環境負荷低減技術を更に向上させる次世代火力の開発・実用化を加速させるとともに、ビッグデータを活用したサービスの高度化普及にも取り組みます。

原子力については、福島第一原子力発電所の廃炉、汚染水対策、産業界としての継続的・自主的安全対策に取り組むとともに、核燃料サイクル維持の重要性、放射性廃棄物処分の解決、原子力事業の在り方に対する意見発信、原子力導入を進める海外各国への支援活動を着実に進めます。

原子力発電は原子力規制委員会の新規制基準をクリアした発電所の再稼働が進められておりますが、未だ国民の皆様のご理解が十分に得られているとは言えず、17年度がエネルギー基本計画の見直し年度であることも踏まえ、政府におかれましても、安全を大前提にエネルギー・セキュリティ及び地球温暖化対策の観点から原子力が重要なベースロード電源であることを今一度国民としっかり共有するよう進めて頂くようお願い申し上げたいと思います。

昨年は多くの災害に見舞われました。被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、安全で強靱な電力インフラを世界に先駆けて構築することは、安全安心で快適な日本社会の実現のため、そして産業界の成長戦略のためにも大変重要な課題であり、これからも着実に取り組んで参ります。

もうひとつ、電機産業、更に産業界・経済全体を成長戦略に乗せるための重要な取り組みは、新たなものづくり、サービス産業創成に向けたIoT、第4次産業革命への対応です。

JEMAでは、特に製造業としてのスマートマニュファクチャリングの推進に取り組んでおり、本年11月開催するシステムコントロールフェア2017/計測展2017東京では、「IoTで未来を拓くものづくり新時代」をテーマに、昨年新たな製造業の姿を提唱した「製造業2030」に基づき、ものづくり革新に関するユースケース創出などの最新情報を発信致します。

製造以外の分野におきましても、あらゆる分野でIoTやビッグデータの活用によるサービスやソリューションの高度化は進んできており、今年度市場創設される予定のネガワット取引などを見据えたエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスの検討、あるいは今後家庭分野で普及が進むと期待されるスマート家電についてもしっかり取り組んで参ります。

成長戦略を実現する上で、グローバル展開・国際標準化も重要な課題です。貿易の保護主義への動きが懸念されており、TPPの発効、日・EU
EPAやRCEPなど早期締結されることを期待し、電機業界としては、官民で連携し戦略的国際標準化活動、及び質の高いインフラ輸出など、引き続きグローバル展開に取り組んで参ります。

成長と分配の好循環を実現するためには、サプライチェーン全体で付加価値を生み出す取り組みも重要であり、昨年の秋以降検討を重ねて参りました下請取引適正化について、JEMAは電機業界の自主行動計画を近々発表する予定です。

以上の通り、電機業界は、会員の皆様とともに一丸となり、幅広い課題にしっかり取り組んで参る所存であり、関係省庁や関係機関との連携の下、産業界の発展、そしてわが国の経済成長を確固たるものにする年にしたいと思います。

最後になりますが、この一年の皆様方のご発展と一層のご活躍を祈念致しまして、私の新年のご挨拶とさせて頂きます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

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