2017年、普及の本格化が期待されるロボット。富士経済(東京都中央区、清口正夫社長)によると、製造業向けのロボット市場は7110億円、20年には1.5倍となる1兆1052億円に達すると予測している。このうち協働ロボットは15年の166億円から、20年には10倍以上となる1709億円になる見込みだ。
15年を通じ製造業向けロボットは、中国をはじめとした人件費の高騰、労働力不足、品質安定化を背景に自動化需要が高まって市場が拡大。自動車、食品、医薬品などさまざまな分野でロボットの導入が広がっている。
今後、東南アジアやインドなどで自動化需要が広がるほか、第4次産業革命を背景にロボットを活用した柔軟な生産システムのニーズの拡大を予想。さらに、機械学習、自律ロボットなどの新しい技術が導入されることで、市場は拡大していくとみられる。
協働ロボットは、15年はドイツやイタリア、スペインといったヨーロッパ諸国や日本、アメリカなど先進国の生産ラインで導入が進んだ。16年以降はトライアルから本格導入に移行しはじめ、EMS向けや多品種少量生産向けに欧米と日本、中国などアジア地域に広がるとみられている。
半導体・電子部品実装向けロボットは、15年度の4278億円から20年には4389億円と微増。15年はスマートフォンなどの主要アプリケーションの販売が伸び悩んだため、市場が縮小した。
一方、自動車関連向けは好調に推移しており、今後は電気自動車市場の拡大、自動運転車の市販なども想定される。車載電装品向けに高速・多機能などの付加価値の高いロボットの需要が拡大するとみられている。
非製造業向けのサービスロボットの中のインフラ点検ロボットは、15年の2億円から20年には5億円に達する見込み。道路や橋梁、トンネルといった社会交通インフラの点検目的で使用されるロボットが対象で、世界的にインフラの老朽化が進む中で、人件費の高騰、人手不足などにロボットを活用した効率的な点検の需要が拡大している。日本でも国土交通省が17年から採用する方向を明らかにしており、米国でも産学連携で開発された橋梁床版点検ロボットが15年から5年間で1000橋の点検に適用される計画となっている。
同じく医療系ロボットは、15年850億円だった市場が、20年には1650億円と約2倍に増加。主に臨床用で使用される手術支援を行うロボットを対象とし、医療ロボットは高価であることから先進国を中心に導入が進んでいる。特に米国で先行している。
コミュニケーションロボットは15年の17億円から20年には152億円に達する見込み。自ら話したり、人の呼びかけに反応するロボットと、遠隔地に置き、通信機能を介して遠隔地の人とコミュニケーションを行うための視覚と聴覚が付与されたロボットが対象。
15年に発売されたソフトバンクロボティクスの「Pepper」など、ロボットを導入した法人ユーザーは接客、案内など実際の業務に取り入れることで省人化や集客効果が期待されることから、需要は拡大していくとみられる。