医師の技術を支えるエレクトロニクスの裏側 (後編)
■特殊性 「ロボット+はんだ付」で解決
高い要求品質、狭小かつ高密度実装、特殊なはんだ材料、時には大量生産など、医療機器のはんだ付に求められる要素はさまざまだ。これら多岐にわたる需要に対して、最も柔軟性が高いとして、多くの医療機器メーカーが採用するのが、ロボットを使用したはんだ付装置である。ロボットは、高精度の繰り返し作業を得意とし、一定した品質を生みだすことができる。
レーザーはんだ付は、部品が入り組んだ、狭小スペースにもピンポイントかつ非接触ではんだ付ができる。こて付であれば、その歴史が証明するように、高熱容量や安定した量産が可能である。超音波はんだ付は、フラックスなしではんだ付を可能にする。人体内に挿入するような医療器具では、強酸性であるフラックスの使用をできる限り避ける傾向にある。従って、フラックスを塗付せず、はんだ付ができる超音波に注目が集まっている。
厳しい要求品質をクリアするスキルを持つ技術者は限られる。そして、その育成にも時間がかかる。優れた技術者の技をロボットに反映する。医療機器の製造でも効果的な手法とされ、ロボットによるはんだ付の導入が広がっている。
■超音波のキャビテーション効果
液体に超音波振動を与えると、振幅の圧力差によって気泡状の小さい空洞が発生する。この現象をキャビテーション(cavity=空洞)と言い、この空洞が大気圧によってつぶされ、大きなエネルギーを発生させる。超音波はんだ付はこのキャビテーションによる瞬間エネルギーを応用して酸化物を除去する。
超音波はんだ付システムは、加熱したこて先から60kの超音波を発振して、はんだ付を行う。振動子で発振された超音波がホーンを介して、こて先に伝わる。はんだ付母材と溶融はんだの境界付近には、超音波のキャビテーション効果により、真空の空洞(泡)が発生する。
昨今のRoHS指令や環境規制により、強力な酸を含むフラックスの使用が避けられるようになった。そこで注目されたのが超音波によるフラックスフリーでのはんだ付。キャビテーション効果により、酸化被膜を除去した後のはんだ付では、通常のはんだ付と同じく、反応層(拡散層)が形成される。
■世界に広がる医療機器の製造拠点
医療機器ではアメリカが一歩抜きんでている。アメリカの医療機器メーカーの多くは、大型の検査装置や測定機器を米国本土で製造し、汎用品は、プエルトリコやドミニカなどカリブ海にある工場で生産している。アジア向けの製品はシンガポールで作っているケースが多い。
ヨーロッパ、日本にも優れた医療機器メーカーがあり、製造拠点は世界中に広がっている。ジャパンユニックスは、はんだ付の専業メーカーとして、グローバルに事業を展開し、売り上げの50%超を海外事業が占める。
はんだ付ロボットは、品質とサポートが重要とされ、各国・各地域に代理店を設置。現地のパートナーと密に連携し、各国で日本と同様のエンジニアリングサポートができる体制を整備している。世界の大手メーカーに多数の納入実績があり、グローバルでのサポート超音波の結合原理力は、高く評価されている。世界屈指のはんだ付技術力を持ち、はんだ付ロボットの開発・販売だけでなく、その周辺装置も手掛け、SI(システムインテグレーター)としての実績も豊富だ。
カテーテルのような細径のワイヤ状のものは、作業時に固定がしづらく、はんだ付が難しい。ジャパンユニックスには、社内に固定治具を専門に開発するチームがある。過去の事例や類似例などから最適解を導き出し、ワイヤ類をはじめ、さまざまな搭載部品に対応した、固定治具を設計する。
はんだ付を科学的に分析するラボや、はんだ付スクールを設け、社内外においてはんだ付技術者の育成を行っている。品質においても、製造業の国際標準であるIPCの国内唯一のパートナーだ。IPCでは、医療の特殊性を考慮し、通常のエレクトロニクス製品に加え、医療分野に特化した品質の標準化も行っている。世界中から届く、はんだ付のサンプルテスト依頼に加え、“世界基準”の要求品質を常日頃から入手している。
(続く)
■ジャパンユニックス■
(東京都港区、河野正三社長)
1974年の創業以来、最新鋭の分析機器を活用してはんだ付に関する基礎研究を進める一方、レーザーや超音波はんだ付など最新技術を取り入れたはんだ付装置の開発を行っている。世界各地の車載部品、スマートフォン、EMSをはじめとする主要メーカーに数多くの技術支援を行っている。
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