新年明けましておめでとうございます。
年頭に当たりまして、平素より日本機械工業連合会に対しお寄せ頂いております皆様方の温かいご協力とご支援に対し、心から御礼申し上げる次第であります。
さて、昨年一年を振り返りますと、2つの大きなサプライズがありました。ご高承のとおり、6月には、英国の国民投票において、EU離脱が多数の支持を得るところとなり、また米国では、TPPに反対を唱えるトランプ候補が、11月の大統領選に勝利致しました。1980年前後に共に政権についたサッチャー首相やレーガン大統領が新自由主義的な経済政策を唱える中で本格化したグローバリズムの流れに対して、三十年数年後の今、その震源地であった米英において、逆転の動きが始まったように見えるわけであります。
私たちは、このように不確実性が高まる時代のなかで、新年を迎えているわけでありますが、こういう時代であるからこそ、グローバル化の持つ光と陰の両面を冷静に見極める必要があるように思います。
米英を中心とした所得格差の急激な拡大や、ドイツを除く大陸ヨーロッパ諸国における若年層を中心とした極めて高い失業率など、反グローバリズムの動きの背景に長期的・構造的な課題が宿されていることを陰の部分の問題として認識し、企業経営においても、その政治的リスクを相当深く考えていかなければならない時代になってきているのではないでしょうか。
また、今日のグローバル化においては、人・モノ・金の移動に加え、情報のリアルタイムな自由移動が、ネット革命を通じて飛躍的に高まってきていることにも改めて注目する必要があります。
情報と共に課題意識が世界中で共有されるなかで、技術革新への取り組みも、世界的にシンクロナイズされるような時代となってまいりました。とりわけ、IoT、AI、サイバー・フィジカル・システム、ロボティクス等に象徴される「デジタル化の潮流に沿った技術革新の取り組み」はあらゆる国を巻き込んだ世界的な流れとなっております。この新たな技術革新は、様々な社会的課題を解決する上で極めて有用であり、ユーザーにとっては益々便利な社会になる一方、サプライサイドでは、独占的プラットフォーマーが利益を総取りしかねない、新たな企業格差、国家格差の時代に突き進む可能性も宿しているように見えるわけであります。
日機連では、こうした問題意識の下で、3年前より会員の皆様の参加を得て特別の専門部会を設置し、世界的なパラダイムシフトの動きについて研究を行ってまいりました。
また、一昨年にはこうした取り組みを基礎として、広範な呼びかけを行うなかで「ロボット革命イニシアティブ協議会」を創設し、ドイツにおけるインダストリー4.0の推進母体との連携を含めて具体的な活動を展開してまいりました。更に本年からは、IECを中心にスマート・マニュファクチャリングの国際標準化の作業が開始されることに伴い、これに対応したわが国における「国内審議団体」の役割を「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」が担うこととし、日機連本体としてもこのRRIの活動を全面的に支援することと致しました。この方針は、昨年秋に、理事会及び総会においてご了承を頂き、また、その後「ロボット革命イニシアティブ協議会」の運営幹事会の承認を得、本年はいよいよ具体的なアクションが始まる年となります。誠に微力ではございますが、政府、関連業界及び学界の関係各位のご協力を得て、国際的にも名誉ある地位が築けるよう、頑張ってまいりたいと思います。
また、技術革新の推進に向けて「研究開発税制」の強化が求められるなか、IoT時代に即応した制度の充実を、製造業関連の他団体とも連携して関係方面に要請してまいりましたが、政府・与党のご理解を得て、昨年末には税制大綱において、新たな設備投資促進の税制とともに、実現の運びとなりました。関係各位のご理解とご尽力に対して、心より感謝申し上げる次第であります。
米欧の政治変化のなかで、長期的には保護貿易主義のリスクが増大する一方、足下では日米の金利差等を背景に円安が進み、株価も上昇してまいりました。また、OPECと非OPEC諸国が15年ぶりに原油の協調減産を合意するなかで、資源経済にも一定の秩序が戻ろうとしております。
こうしたなか、政府においても年末に決定した来年度経済見通しにおいて、経済成長率、物価動向ともに改善の見通しが示されたところであります。
他方、雇用情勢については今や有効求人倍率が1を切る都道府県が皆無となる状況の下で、来年度の完全失業率は、2.9%と、3%を切る二十数年ぶりの低水準が予想されております。
今後の成長戦略においては、こうした労働力不足をいかに克服するかが益々大きな鍵となるなかで、サービス産業を含めた広範な分野での機械化、システム化が課題となっており、新たな成長に向けて私共機械産業の果たす創造的な役割への期待は、誠に大きいものがあると考えます。
わが国機械産業にとって、2017年はリスクを伴いつつもチャンスの年であります。会員各社・各団体の益々のご発展を心から祈念申し上げます。