新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
さて、昨年の我が国経済は、政府の経済政策効果もあって全般的に緩やかな回復基調にありました。その中にあって、特に、私どもロボット業界は、一昨年に取り纏められた「ロボット新戦略」での政策目標とそれに伴う各種施策に支えられ、国内ではユーザー側での需要意欲の高まりとともに、ロボットビジネスに関わる多様な事業者、さらには多くの自治体などでも活発な動きが見られました。また、欧米や中国をはじめ、世界中においてもロボットに対する旺盛な需要に支えられ、日本のロボット業界の存在感を強くすることができた一年でした。従いまして、本年もロボットは引き続き好調な業績が大いに期待されると存じます。
一方、ひるがえって昨年の世界情勢を俯瞰しますと、英国のEU離脱に加え、米国でのトランプ大統領誕生にも代表されるようにナショナリズム、あるいは反グローバリズム的様相が急速に広まり、この新年は世界情勢への影響が懸念される幕開けとなりました。
また、世界経済については、米国の利上げに伴う新興国経済への影響や、今後のナショナリズムの世界的連鎖といったリスク懸念がある一方、米国ではトランポノミクスでの法人減税やインフラ投資等への期待による景気回復の兆しがみられるほか、中国、欧州においても持ち直しがみられる状況にあります。
いずれにせよ、今後の展開については引き続き注視していく必要があり、不透明感の強い、また変化の激しい年となるものと考えられます。
このような状況の下、我が国のロボット生産は、昨年が円高基調で進んだこともあり、需要の約7割を占める輸出の環境としては厳しい状況でしたが、好調な国内出荷の伸びにも支えられ、2016年は対前年比3%増の7000億円超えを達成した模様です。
そして17年の今年は、引き続き国内での需要増に加え、米国での更なる景気拡大と製造業回帰による堅調な伸び、中国での高い自動化投資意欲、さらに欧州でのインダストリー4.0を通じた産業用ロボットへの関心の高まりなどから海外需要の拡大も期待されています。このようなことから本年のロボット生産額につきましては、対前年比7%増の7500億円を目標としたいと思います。
このような中、当業界としては中長期的視点に立った業界の活性化をさらに推進する必要がありますが、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。
第一は「市場拡大に向けた取り組み」です。ロボット新戦略での「世界一のロボット利活用社会の実現」を目指し、当会ではロボット革命イニシアティブ協議会との連携のもと、「ロボット利活用推進WG」の事務局を担当しております。本WGでは特に、2020年に向けたロボット活用の裾野拡大に向け具体的方策(マッチング活動、都道府県レベルでのロボット事業支援機関の創設、普及を促す環境整備、各種ベストプラクティスの収集と公表等)について検討を行っており、その役割を引き続き積極的に務めてまいります。
また、これまでの経済産業省の「ロボット導入実証事業」に加え、16年末には16(平成28)年度補正の「ロボット導入促進のためのシステムインテグレータ育成事業」の業務管理事業者にも採択されました。2つの補助事業を通じてシステムインテグレータの育成とともに、中小企業をはじめとしたユーザーへのロボット普及拡大に努めることとします。
第二は「産学連携の推進」です。競争力をベースとしたグローバル市場での優位性確保や今後の潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションの加速化を通じた市場の獲得・拡大が急務となっています。特に、欧米先進国での技術革新に加え、新興国でのロボット技術のキャッチアップは目覚ましく、我が国としてもイノベーションの加速化を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めて参ります。
加えて、16(平成28)年度より産学間マッチングの促進を企図した「産学連携交流会」をスタートさせましたが、引き続き本事業の充実化に努める所存です。
第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。国際標準については、欧米が市場の獲得手段として戦略的に取り組んでいますが、引き続き我が国も官民挙げての取り組みが重要です。特に17(平成29)年6月には、ロボットの国際標準化について審議しているISO/TC299の第2回総会及び関係するワーキンググループの会議が、京都市で開催されることとなっており、この準備も含めて国際標準化活動に対しては、ロボットのリーディングカントリーとして引き続き積極的に取り組むこととしております。加えて国際ロボット連盟の活動とも併せて、国際交流を積極的に推進していく所存です。
また、17年6月7日~9日に「実装プロセステクノロジー展」が、そして11月29日~12月2日の4日間、隔年開催の「国際ロボット展」を開催することとしており、両展を通じて技術情報の発信とともに様々な分野へのロボット利用拡大への意欲を喚起するのに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。
引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。