IoT、半導体、ロボット追い風
アメリカで保護主義を掲げるトランプ政権が発足、イギリスのEU離脱、不安定な中国経済など、世界経済は不確実で不透明となっている。そんななかFA・制御・電子部品の流通商社の2017年は、不安を抱えつつも、まずまずのスタートを切った。東京オリンピック需要の本格化、世界的なIoTやロボット需要の拡大などの好材料も多く、その勢いに乗り、ビジネス変革を進める企業も出始めている。
ソリューション営業を強化 Eコマース 台風の目
■市況の様子
FA・制御・電子部品の流通商社の業績は会社によって差があるが、全体的な市況としては、ほぼ横ばいから若干のマイナス。期待されていた東京オリンピック関連のインフラ投資の遅れをはじめ、円高の影響で輸出が厳しく、ソーラー(PV)システム関連の需要減少も響いている。
一方で、半導体産業は好調。特にFPD関連で、新興国における液晶テレビへの置き換え需要と、先進国における有機ELへの設備投資が活発。国内では、自動運転や電気自動車など、自動車の進化にともなう需要が喚起され、車載向け半導体や電子部品、センサ、コネクタ、ケーブルなどが上がると見られている。少子高齢化対策として普及が始まっているロボット関連も期待市場の一つ。特に中国では、人件費の高騰と国や地方政府の補助金で急速に需要が高まっていて、世界的に市場が拡大。そのほか医療機器も堅調に推移している。
また17年後半から18年にかけて遅れていたインフラ投資も本格化すると見られており、好材料は多い。
■ソリューション営業の強化、物流の外部委託など、独自色を発揮
国内市場が成熟化し、流通商社も従来のスタイルから、市場に合わせて変化している。商社の機能、強みであった営業と流通、回収、金融といった多機能の役割のなかから、より自社の独自性が発揮できる部分に注力することで収益アップを目指す。特に技術力やソリューション提案を生かした営業戦略へのシフトが目立つ。
中央無線電機は、コーディネータとしての取り組みを強化して差別化。ライト電業はソリューションビジネス部を設け、技術者がユーザー企業の技術者とつながり、課題を共有したソリューション提案を実現している。サンナイオートメーションは「機械と電機の間の見えない壁を埋めてつなぐための購買前後の相談やアドバイス、一括発注に対応できる製品調達サービス能力、補修品調達機能など、製品価格以外でも、商社の存在をアピールできる要素は多い」とする。
またコストダウンに向け「物流機能の外部委託」に取り組む企業も。物流機能を切り離して専門業者にまかせることで物流品質を上げるとともに、費用を固定費から変動費にすることでコストダウンを実現。近年のネット通販、Eコマースの利用拡大に合わせ、柔軟に対応できるようにしている。さらに、「コンピュータ管理時代の物流を営業から切り離すことによる営業強化の効果も期待できる」(大和無線電機)。
■Eコマース、ネット販売への取り組み
民生品では流通の主流になりつつあるEコマース、ネット販売だが、FA・制御機器、産業用資材の分野でも台風の目になりつつある。第4次産業革命を題目に、ユーザー企業では設計、製造、保全といったフィールドレベルの変化が進んでいるが、その影響は購買や調達のデジタル化にも及んでいる。
アマゾンは、産業領域向けに「産業・研究開発用品ストア」でサービスを展開。海外のアマゾンで取り扱いのある商品の日本での販売や、新たに切削工具の取り扱いを始めるなど、拡充を進めている。急成長を遂げるモノタロウは、累計登録顧客数が220万口座に達し、商品の取り扱い点数も1000万点まで拡大。購買改革に関するソリューションも280社が利用するなど、急拡大を見せている。
一方、流通商社も取り組みを強化。セフティデンキはホームページをリニューアルし、ネット販売を強化。浜田電機も「FA・制御機器でも利用が増えて定着しつつある」と手応え。アール電子は「今後、商社としてネット販売とどう棲み分けていくかの課題を抱える中で、一歩でも先に進めることによって商社の役割を果たす」としている。
■人材採用、教育の強化
営業スタイルの変化、Eコマースなど新時代の流通に対し、各社はそれに対応した人材採用や教育に力を注ぐ。高木商会は、営業担当の技術スキル向上に注力。IoTをテーマとしたセミナー開催、出張型セミナーなども行っている。
日昭無線は、社内の若返りに向け、定期的に採用を実施。またサンワテクノスは、AEDやLED機器の販売推進など、女性の気づきを生かした提案をはじめ、ワークライフバランスやワークシェア、ネクスト女性リーダーの育成といった働き方の変化に合わせて女性活用などにも取り組んでいる。